第2回自慢げに犯歴を語ったアミール 中村さん事件との共通点

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 中村哲さんの殺害事件を追う取材は、「犯人から直接話を聞いた」と語る情報提供者の登場によって、新たな展開を迎えた。情報提供者は、次のように話した。

●犯人の名前は「アミール・ナワズ・メスード」で、年齢は40歳前後

パキスタン人だが、いまは国境を越えて、アフガニスタン東部クナール州の隠れ家に潜伏している

ノーベル平和賞受賞者のマララさんを銃撃したことで知られる、パキスタンのイスラム武装勢力「パキスタン・タリバーン運動(TTP)」に属する

●中村さんを誘拐するつもりだったが、「共犯者が撃ってしまった」と話している

連載「実行犯の『遺言』 ~中村哲さん殺害事件を追う~」

2019年にアフガニスタンで起きた、医師の中村哲さん殺害事件の全貌に迫る連載です。捜査は難航しますが、発生から1年以上が経過して記者の元に実行犯の有力な情報がもたらされます。犯行を告白したという「アミール」は何者なのか。連載の2回目です。

 これが本当なら、真相解明の突破口となり得る証言だ。私は、証言の信用度を確かめる作業に取りかかった。

 まず、アミールが実在するかどうかだが、これには確証があった。朝日新聞と連携して武装勢力の動向を調べてきた取材協力者が、2016年夏に偶然、アミールに会っていたのだ。

 私は2016年当時のメモや写真を見直しながら、取材協力者にアミールと会った時の状況を振り返ってもらった。

元首相暗殺未遂事件を首謀

 取材協力者によると、アミールと会った場所は、アフガニスタン南東部にあるTTPの拠点だった。拠点近くではTTPのメンバーたちが自動小銃防弾チョッキの手入れをしていた。ちょうどパキスタン側に出撃する前で、どこから仕入れたのか、パキスタン軍の迷彩服を着ているメンバーもいた。迷彩服を着たメンバーは、パキスタン軍の施設を襲う場合、迷彩服で兵士になりすました方が、施設に近づきやすいと説明していたという。

 そんな拠点に、アミールは運転手付きの白い乗用車に乗って現れた。腰にピストルを下げ、秘書や護衛を連れていた。アミールは取材協力者と出身地が同じだと知り、取材協力者を白い土塀の建物に招き入れ、あぐらをかいて雑談を始めたという。

 その際、取材協力者が撮った写真には、黒いヒゲをたくわえたアミールが、クッションにもたれてくつろぐ様子が映っていた。仕立てのいい白い伝統衣装をはおり、白いスカーフを頭にかけていた。右手の人さし指の爪が割れていた。

アミールの存在が徐々に明らかになってきました。記事後半では、アミールの近況や暮らしぶりを知る人物にインタビューしています。中村さん殺害事件についての情報や、アミールの「余罪」についても触れられています。

 取材協力者によると、身長が…

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