宣言拡大、変異株に危機感 人出減でも感染減らない恐れ

枝松佑樹 編集委員・田村建二
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 緊急事態宣言やまん延防止等重点措置の対象地域が広がった。その背景には、変異ウイルスの全国的な拡大がある。宣言対象の3道県では、新規感染者数が極めて速い速度で増加しているのが特徴だ。14日朝に開かれた政府の「基本的対処方針分科会」のメンバーの一人は「(拡大理由の)一番は変異株への危機感。今までの経験が通じない印象だ」と話した。感染力が強く、飲酒を伴う会食を中心とした従来の対策では、思うような効果が得られない恐れがある。

 国立感染症研究所によると、全国の大半の地域で、5月9日には感染の90%以上が変異株に置き換わったとみられる。北海道は99%と推計されている。多くはいわゆる「英国型」で、従来と比べて感染力が1・3~1・5倍ほど高く、重症化リスクも1・4倍ほど高い可能性がある。高齢ではない人も重症化しやすいというデータもある。

 変異株が流行すると、人流が抑えられても、感染はなかなか減らない。4月5日に重点措置、25日に緊急事態宣言の対象となった大阪府では、4月に入るころから繁華街の人出は減っていた。しかし、現在も感染者の減少傾向ははっきりせず、治療を受けられずに亡くなる人が相次ぐ深刻な事態が続いている。感染研の分析では、大阪では4月前半には、感染全体の7~8割が変異株に置き換わっていた。

 政府は今回の宣言や措置の拡大によって、酒類の提供自粛要請といった対策を進めるとともに、検査による変異株の監視を継続する方針だ。だが、「従来であれば効力があった対策をとっても、変異株では立ちゆかない」という見方が専門家の間では広がっている。

 東京都医学総合研究所の西田淳志・社会健康医学研究センター長は「感染が地域に広まってしまうと、『上流』としての繁華街の人出を減らしても、下流を含めた全体をすぐに抑えこむのは難しい。緊急事態宣言のような強制力を伴う強い手を早いタイミングで打つ必要がある。変異株であればなおさらだ」と話す。(枝松佑樹、編集委員・田村建二

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