国産ワクチン、大規模治験の壁 未接種者が減り対象不足

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市野塊 野口憲太
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 新型コロナウイルスに対する国産ワクチンの実用化に向け、承認前の最後の大規模治験(第3相試験)が大きな壁になっている。世界中でワクチン接種が進み、未接種の参加者が集めにくくなっているからだ。政府は対応を急ぐ考えだが、壁を乗り越えるのは簡単ではない。

数万人単位で必要な場合も

 「現実問題として非常に難しい」「ほかの方法で評価ができないか」――。9日に横浜市であった日本感染症学会の学術講演会。国産ワクチンを開発している製薬企業からは、難航する治験について訴えが相次いだ。

 治験はワクチンや薬の承認を得るために必要な臨床試験で、3段階ある。第1相、第2相では少ない人数で主に安全性を調べる。最終段階の第3相では多くの人数で有効性も調べる。データを厚生労働省に提出し、部会で審議にかけられる。

 課題となるのが、第3相だ。ワクチンの治験では通常、未接種の人に対し、ワクチンをうつグループと、生理食塩水などの「偽薬」をうつグループに分け、効果を比較する。多いと数万人単位の参加者が必要だ。

 だが、ファイザーなど複数の新型コロナワクチンが実用化され、世界的に接種が進むことで、国内企業がこれから未接種の参加者を集めるのは容易ではない。新型コロナのように亡くなるおそれもある感染症で、すでに使えるワクチンがあるのに偽薬をうつことが許容されるのか、倫理的な課題も残る。

 厚生労働省はほかの方法も検討している。承認済みのワクチンと比較して「劣っていない」ことを示す方法があり、偽薬を使わないで済むが、治験の規模を小さくできるとは限らない。感染を防ぐはたらきのある「中和抗体」の値を接種後に測って有効性を調べる方法もあるが、審査を担う医薬品医療機器総合機構(PMDA)の荒木康弘・ワクチン等審査部長は「中和抗体価の指標を定めるにしても、科学的な知見がまだ足りておらず、難しさがある」と話す。

■早期承認制度を求める声…

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