「芋煮」をお盆から食べたい 山形の高校生が試験栽培

辻岡大助
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 山形の秋の風物詩・芋煮と言えば、行楽の季節に河川敷で鍋を囲む芋煮会が定番だ。ただ、8月のお盆から食べ始めたいという山形県民も少なくないようだ。その時期の県産サトイモの収穫をめざし、高校生たちが試験栽培やアンケートを駆使し研究を続けている。

 山形県村山市の県立村山産業高校農場で4月12日、生徒10人がサトイモの苗を植えた。農業科学部サトイモ・芋煮研究班の部活動で、同校の別の農場と合わせて約600株を植えた。粘りが強く、芋煮に適した品種「土垂(どだれ)」だ。

 きっかけは4年前。新たな栽培方法の研究を始めた矢先、山形市内の業者から「8月のお盆から多くの需要がある」と聞いた。

 部を指導する廣瀬僚太教諭(36)によると、県内のサトイモ栽培は通常、春の大型連休明けに苗を植え、9月以降から収穫が本格化する。8月に芋煮を食べようとすれば県外産に頼らざるを得ない。一方、県内産の収穫期を8月に合わせようとすると、苗の植え始めが4月になり、霜害にあいやすくなる。

 霜害を避けるため、部員たちは4月初めに畑に保温資材「ビニールトンネル」を設けることにした。さらに、芽を下にして植えて強い芽だけを伸ばす「逆さ植え」を試すと、保温資材を使わず、芽を上にする「正常植え」と比較して、収量は逆さ植えが約2・7倍にのぼった。

何月ごろから芋煮を食べたくなりますか?聞くと

 また今年2~3月には、「何月ごろから芋煮を食べたくなりますか」といったウェブアンケート(回答者約240人のうち県民約9割)を実施した。「8月」を選んだのは37人で、「9月」110人、「10月」69人といった具合だった。

 廣瀬教諭は「芋煮は8月のお盆に帰省して家族や親類と一緒に食べるソウルフードであり、9月が多いのは山形市内での『日本一の芋煮会フェスティバル』の影響」とみる。

 アンケートでは、山形県出身者は山形県産のサトイモにこだわり、「土垂」を使う傾向が強いこともつかんだ。自ら育てた土垂の芋煮を昨年8月に地元の道の駅で販売し、客からの高評価も得ていた。

 今年の苗は、4月後半に村山市内の農家2戸に贈った。県北端の真室川町で11年前からサトイモを栽培している農業会社「あべ農場」も注目していて、担当者は「生徒たちの研究は大変参考になるので、今後、栽培を工夫してみたい」と言う。

 研究の先にあるのは地域貢献で、農家ではできない細かい実験や調査のデータの蓄積が有効だ。同校農業科学部長で農業環境科3年の柴田梨奈さん(18)は「私たちの活動を地域の農家に伝えていきたい」と意気込んでいる。(辻岡大助)

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