2021年1月、ジョー・バイデン氏の第46代米大統領就任とともに、注目を集めたのが副大統領のカマラ・ハリス氏です。女性として、しかも黒人とアジア系としても初の副大統領に就任しました。
一方、おもちゃの世界では、約30年前から女性の「米大統領候補」が存在しています。日本でもよく知られている米国発の女性人形「バービー」の一種で、大統領候補の人形が姿を変えつつ、販売され続けています。まだ、女性の米大統領は誕生していませんが、バービーが追いかけてきた「夢」を取材しました。
初出馬は1992年、ブロンドに真っ赤なスーツで
大統領候補になったバービーが最初に登場したのは1992年。ボリュームのあるブロンドの巻き髪に、真っ赤なスーツという装いだった。
この年の米大統領選では、ビル・クリントン氏が現職のジョージ・ハーバート・ウォーカー・ブッシュ大統領を破った。その年以来、バービーの販売元である米マテル社は大統領選のある年に、大統領候補のバービーを装いを変えつつ出してきた。
ジョージ・W・ブッシュ氏が再選した2004年は、黒髪に褐色の肌、パンツスーツ姿の人形も登場。トランプ大統領が生まれた16年には、副大統領候補のバービーも出た。
8頭身じゃないけど「どれもバービーです」
昨年はアフリカ系アメリカ人のバービーが大統領候補になった。マテル社は、選挙チームを支えるキャンペーンマネジャー、ファンドレイザー(資金調達担当)、有権者の人形も同時に発表。どのバービーも肌や髪の色、体形はバラバラだった。
有権者の人形は背が低めで、ファンドレイザーはふっくらとした体形をしている。服装もスーツとパンプスや、ジーンズにスニーカーと、まるで現実世界の女性のように多様だ。
59年に米国で発売されたバービー。ブロンドの白人で現実離れした8頭身のスタイルのドールという先入観が、記者にはあった。そもそもこれらも全部バービーなのだろうか?
そこで、都内にあるマテル社の日本法人を訪ねた。
社内にはバービーのほか、ボーイフレンドのケン、バービーの3人の妹たちの人形が並ぶ。
しかしよく見ると、肌の色、目の色、顔立ち、体形が違う女性の人形も一緒に並べられていた。どれも「バービー」なのだという。どういうこと?
「肌の色の違うバービーは、もっと前からいるんですよ」。バービーの日本国内でのブランド担当をしている小林真弓・アソシエイトマーケティングマネージャーが説明してくれた。
アフリカ系やヒスパニック系のバービーは80年に最初に登場。それ以前にも、68年にはアフリカ系アメリカ人の友人「クリスティー」の人形も登場していた。アメリカで黒人の権利向上を訴える公民権運動が盛んだった頃だ。
16年には、ふくよかなバービー、背の低いバービー、長身のバービー、車いすに乗ったバービーも登場している。
どのドールも魅力的で、記者は思わず「かわいいですね」と連呼してしまった。小林さんは少し言いにくそうに「実は、バービーのことを『かわいい』と表現しないようにしているんです」と付け加えた。
宇宙飛行士、CEO、天体物理学者…就いた職200以上
外見が様々なバービーが生まれた背景には、美しさの定義は社会で作られる画一的なものではないというメッセージが込められている。
そのため、「かわいい」だけでなく「スリム」「細い」といった見た目を形容する言葉もバービーのPRでは使わないようにしているという。
「女の子だって何にでもなれる」とのコンセプトで生まれたバービー。キャリアでは昔から多様だった。
発売翌年の60年と61年には、ファッションエディターやフライトアテンダントになった。65年には宇宙飛行士、73年には外科医、85年にはCEO(最高経営責任者)と、今も女性が少ないと言われる仕事や役職もこなしてきた。
21世紀に入ると、ロボットエンジニアや天体物理学者など、女性の比率向上が課題となっている理系の専門職に就いたバービーが次々と発表されている。
バービーがこれまでに就いた職は200以上。そこには生みの親の思いが反映されているという。
ルース・ハンドラー(191…
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