「お願い」から1年、日常化した緊急事態 憲法の意義は

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斎藤徹
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 昨年2月、北海道は全国に先駆けて新型コロナウイルスの感染「第1波」のまっただ中にあった。道内の新規感染者数は22日にそれまでで最多の9人、27日には、さらに15人に増えた。

 「一日も早くこの問題を収束させ、暮らしへの影響を最小のものにしていくためには、これまでに経験のない思い切った対策が必要だ」

 金曜日の28日、北海道感染症危機管理対策本部会議。鈴木直道知事は独自の「緊急事態宣言」を出し、週末の外出自粛を道民に求めた。直後の記者会見で宣言に法的根拠があるのかを問われ、知事は「それはない」と答えた。「道民の命や健康を守るという観点から、ぜひ協力いただきたい」と述べ、「お願い」であることを強調した。

 その週末、道内の繁華街や観光地では人出がぱったりと止まった。感染者数は徐々に減り、3月17日にはゼロに。19日、宣言は解除された。全国では感染者が増え始めており、専門家からは「北海道は感染を抑え込んだ」と評価された。道がコロナ対応を検証するために設けた有識者会議は、「感染拡大防止の観点から適切」「行動自粛の要請は行政の裁量の範囲内」などと結論づけた。

 だが、影響力の大きい知事が、法律に基づかすに移動の自由などの制限につながる要請を出すことの危うさを感じる憲法学者もいた。その1人、室蘭工業大大学院工学研究科の清末愛砂(きよすえあいさ)准教授は「たとえ『お願い』であったとしても、法的根拠がないまま事実上拘束力を伴う先例をつくってしまったのは、法律に基づき執行するという法治国家のあり方をないがしろにしかねない行為だった」と指摘する。

憲法学者76人が抗議声明出したが

 同じ3月、国会では、新型コ…

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