大阪 関西人懐かしのピロシキ 豊中で再出発

編集委員・副島英樹
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 関西人の思い出の味、懐かしのピロシキを絶やさず作り続けてきた「モンパルナス」が5月1日、大阪府豊中市庄内西町で再スタートを切る。1974年に先代社長が昔の「パルナス製菓」から独立し、兵庫県尼崎市内の店舗で半世紀近く営業を続けてきたが、新型コロナの影響で喫茶部門が打撃を受けて移転を決意。装いも新たな店舗で、看板の味を守り続ける。

 阪神尼崎駅にあった店舗の営業最終日だった今年3月31日。店舗を運営するパルナス商事の古角(こかど)武司社長(61)は久しぶりに厨房(ちゅうぼう)に入ってピロシキづくりに加わった。別れを惜しむ客が途絶えず、一時は1時間待ちの行列もできたからだ。1回で揚げられるピロシキは40個。揚げるのに15分弱かかる。すべて手作業だが「手が覚えていました」。1日で約1千個が売れた。

 ピロシキを求めて、滋賀や奈良など関西一円からも客は来てくれた。しかし、コロナの打撃は尋常ではなかった。ソーシャル・ディスタンシングのため席数も減らしたが、もともと年配の常連客も多く、喫茶部門が落ち込んだ。志村けんさんの死も影響したように感じる。「だましだまし続けていこうというレベルではなく、どこで終わるのか先が見通せなかった」。家賃の捻出すら不可能に思えた。

 懐かしいパルナスの味を引き継ぐ店として愛されてきたが、もう限界かとも感じた。しかし、百貨店の催事や様々なイベントでもピロシキを待ってくれている人たちがいる。何とかのれんを守ろうと思い直した。

 古角社長を支えたのは2人の息子だった。店の内装は、大阪府高槻市に住む長男でインテリアデザイナーの尚也(なおや)さん(31)が担った。福岡に住む次男で銀行員の知也さん(27)は、コロナの支援金や融資手続きなどで父親の相談にのってきた。

 尚也さんは2016年12月、本場ロシアのピロシキの味を確かめようとモスクワを訪れた経験がある。店頭では手間のかからない焼きピロシキが主流だった。味は「父のピロシキの方がしっくりきましたね」。家庭料理では今も揚げピロシキが多いと聞いた。その時モスクワで見た室内装飾や地下鉄駅の照明なども参考にして、新店舗にロシア風の雰囲気を採り入れた。

 店の一角には、パルナスゆかりの品々を並べたコーナーも設ける。「ぐっとかみしめてごらん~」のCMなどで関西人に愛されたパルナス製菓は02年に自主廃業したが、「パルナス復刻委員会」を主宰する会社員の藤中健二さん(57)=兵庫県加西市=と展示をアレンジしていく予定だ。

 開店前日の4月30日。出店祝いの花が並ぶ店内でピロシキやパンづくりの準備が進む中、開店を待ちきれずに様子をうかがいに来る人も。近くに住む40代主婦は「尼崎まで買いに行っていました。パルナスで育った世代は楽しみです」。

 緊急事態宣言下で再出発する古角社長は「本来なら多くの人に内覧してほしいと思いましたが……。コロナが落ち着き、皆さんに楽しんで頂ける空間になればうれしい」と話している。(編集委員・副島英樹)

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 《モンパルナス》新店舗(06・6151・4915)の住所は大阪府豊中市庄内西町2の15の8。阪急宝塚線庄内駅から徒歩3分。ピロシキ1個200円(税抜き)。菓子パンや総菜パンも。約20席のイートインコーナーで喫茶も楽しめる。営業時間は平日・土曜は8~19時、日曜祝日は8時半~18時。ホームページ(http://www.pirosiki.com別ウインドウで開きます)もある。

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