使われぬポケベル波、目をつけた行政 防災無線で活躍中

高田純一
[PR]

 かつてポケベルに使われていた周波数帯を使った防災行政無線の運用を、和歌山県かつらぎ町が始めた。山間部でも受信されやすく、音質が劣化しないなどの利点があるという。県内では初の採用で、町は災害時に迅速、確実に情報を発信できると期待している。

 ポケベルは、電話から送られる限られた文字情報を受信する小型の端末で、1990年代、高校生らを中心に人気を博した。携帯電話の普及で利用者が減り、2年前にサービスを終えた。

 だが、町はその利点に目をつけた。今回の無線で使われる周波数帯は東京テレメッセージが開発したポケベルで使われていた280メガヘルツ。町によると、直進的で透過性に優れ、山間部や建物内でも受信に強いとされる。音声ではなく文字の情報が受信機に送られた後に音声が合成されるため音質が劣化しない。町をカバーするのに必要な中継局の数は、他の周波数帯では7、8カ所必要だったが、この周波数帯なら2カ所ですむこともわかった。

 町内の旧花園村域ではアナログ方式の無線の老朽化が進み、旧かつらぎ町域では、登録制の防災メールや広報車で情報を流していた状況だった。町は災害から未然に防ぐ事業に使える国の「緊急防災・減災事業債」を活用。中継局の整備工事や戸別受信機の購入などに約4億8千万円をかけて昨年から整備を進め、19日から運用を始めた。地震や大雨などが発生した時には災害情報などを音声やサイレンで伝える。

 町役場の親局から最初に配信された内容は、中阪雅則町長の声だった。「災害時や行政情報などを迅速に公平に伝達することが可能となりました。これからも住みよい町づくりに取り組みます」と伝えた。

 これまでに新型コロナウイルス感染症に関する注意喚起やイベント中止を周知するなどした。町危機管理課によると、山間部などにある20の屋外子局(スピーカー)でも聞こえやすいと評判だという。

 戸別受信機は、町の情報を強制的に受信でき、ラジオ機能も備える。各自治会ごとに情報を流すこともできるもので、町内の約7200世帯に無償で貸与することになっている。4月27日現在で普及率は7割強。残る約1900世帯に早めの受け取りを呼びかけている。(高田純一)

有料会員になると会員限定の有料記事もお読みいただけます。

【お得なキャンペーン中】有料記事読み放題!スタンダードコースが今なら2カ月間月額100円!詳しくはこちら