第1回家を追われ、2度の逮捕で少年院 19歳が選んだ絵本

有料記事最後の砦 少年院の日々

編集委員・大久保真紀
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 茨城県牛久市にある少年院「茨城農芸学院」。罪を犯した少年たちが立ち直るための「最後の砦(とりで)」とされる少年院では、どのような矯正教育が行われているのか。記者が訪ねた。

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 面会室に並んだ約20冊のなかから、19歳の在院生の少年が選んだのは「まめつぶこぞう パトゥフェ」という絵本だった。お使いにいって姿が見えなくなった豆粒ほどの小さな男の子を、母親たちが一生懸命探す話をユーモラスに描く内容だ。

 少年は、盛岡大学文学部非常勤講師(児童図書館)の町田りんさん(65)の読み聞かせに微動だにせず耳を傾け、終わった後に「心がほっこりする」と感想を漏らした。

 「お母さんのことが入っている話を読んでほしい」。少年は前回の読み聞かせのとき、町田さんにそうリクエストしていた。

 「お母さんって本来どんなものだろうかと知りたかった」という理由からだった。

 「暴力を振るわれて怖かったことは覚えているけど、いいことはあまり思い出せない。でも、母のことは怖いけど好きだったし、愛してもらいたかった」。記者との面談で、少年は淡々と心の内を語った。

 母は、少年が小学5年のときに自ら命を絶ったという。幼いころに父と離婚した母は、精神疾患を患っていた。食事は満足に用意されず、少年は小学1年のとき、母からの暴力で大けがをして保護され、児童養護施設に入った。

少年はどうして少年院に入り、なぜ母親について描かれた絵本を選んだのか。取材を通して、少年院での生活と心情の変化を追います。

 そこでは年上からいじめられて殴られた。少年も殴り返すようになった。中学3年のとき、先輩の顔を数発殴り、その理由を聞かれることもなく児童自立支援施設へ移された。いつからか人に相談することをしなくなった。2年ほど後に祖父に引き取られたが、「お前がいると金がかかる」「お前がいると大変だ」と繰り返され、家出するようになった。

 寒さに震えながら公園で寝泊…

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連載最後の砦 少年院の日々(全3回)

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