米映画界の祭典、第93回米アカデミー賞の授賞式が25日夕(日本時間26日午前)に開かれた。最高の栄誉である作品賞は米映画「ノマドランド」が受賞し、中国出身のクロエ・ジャオ氏は同作品で監督賞を獲得した。助演女優賞は米映画「ミナリ」で、ユン・ヨジョン氏が韓国人俳優として初めて受賞。アジア系の女性2人がアカデミー賞を獲得する歴史的な授賞式になった。

 主演女優賞は「ノマドランド」のフランシス・マクドーマンド氏が、主演男優賞は「ファーザー」のアンソニー・ホプキンス氏がそれぞれ受賞した。

 監督賞を受賞したジャオ氏は中国出身。米国の高校や大学に通い、米国で活動している。「ノマドランド」は米国内を遊牧民(ノマド)のようにさまよいながら暮らす女性を描いた映画で、高い評価を受けていた。女性監督が同賞を受賞するのは2010年のキャスリン・ビグロー氏以来。アジア系の女性監督の受賞は初めてだ。

 昨年、韓国映画「パラサイト 半地下の家族」でポン・ジュノ氏が受賞したのに続き、2年連続でアジア系の監督賞受賞となった。

 ジャオ氏をめぐっては最近、過去に中国を批判するインタビューがあったとして中国国内では、「ノマドランド」のネット検索が制限されるなどの措置がとられており、監督賞の行方は注目を集めていた。ジャオ氏は受賞スピーチで、中国生まれで、中国で育った際に父親と漢詩に慣れ親しんでいたことに触れ、「子供時代の私に大きな影響を与えた」と語った。

 「ミナリ」は、1980年代に米アーカンソー州に移住した韓国人家族の物語だ。監督は韓国系米国人のリー・アイザック・チョン氏で、韓国系米国人や韓国人の俳優が主要キャストを占め、映画の大半で韓国語が使われる「韓国系」映画で、家族の間の心の葛藤、という世界のだれにでも共通するテーマを丁寧に描写し、ユン・ヨジョン氏の演技力が高く評価されていた。アジア人女優が助演女優賞を獲得するのは、1958年に日本出身のナンシー梅木(ミヨシ・ウメキ)氏が米映画「サヨナラ」で獲得して以来だ。

 25日の授賞式は、新型コロナウイルスの拡大を受けて、より広いスペースであるロサンゼルスのユニオン駅で開かれた。授賞式は映画撮影の一部として位置づけられており、セレモニーの間はマスクを着用せずに進行できるルールが適用された。(サンフランシスコ=尾形聡彦)