くら寿司「100円均一いつまで…」 社長の危機感

有料記事ほんまもん

聞き手・加茂謙吾
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 新鮮なネタと安さを売りに幅広い世代に親しまれている回転ずし。だが、その根幹を支える漁業は、消費の減少、後継者不足などで苦境に追い込まれている。状況を打開できないかと、くら寿司(堺市)が「天然魚プロジェクト」を立ち上げて10年が過ぎた。日本の漁業を持続可能にしていくには何が必要なのか。創業者の田中邦彦社長(70)に聞いた。

 ――回転ずしと切り離せない関係にある漁業ですが、課題が山積しています。現状をどう見ていますか。

 「一番の懸念は担い手である漁業従事者がいなくなっている点です。漁師がとった魚は業者をいくつも介して消費者に届くんです。そうすると価格は高く、漁師の(収入としての)取り分は少なくなるわけですよ。5年ほど前に岩手の釜石に行ったんですが、10キロのブリが地元では千円なのに、大阪では5千円とか6千円になるんです。魚が高いものになってしまって、魚離れも起こしてしまった。どう考えてもアンバランスですよね。漁師が安定的な収入を得られるようにしていかないといけません。仕組みを全体的に改革する必要があります」

 ――漁業者への支援策として「天然魚プロジェクト」を2010年に始めました。どんな活動ですか。

漁師の安定的な収入にもつながる、という「一船買い」。ただ、田中社長は「100円均一もいつまでできるか分からんですわ」と言います。なぜでしょうか。

 「まず、『一船買い』です。海に網を入れると、大きさも種類も色々な魚がとれます。普通なら魚を選んで不要なものは海に帰しますが、一船買いではとれたものを丸ごと買います。年間契約で重量に応じた価格で買い取るので、ものによっては半値くらいにもなります。漁師さんにとっては安定的な収入につながる、ギブ・アンド・テイクの関係です」

 「それから、とれた魚は全部使います。網にかかった小魚をしばらく養殖用のいけすで育て、大きくなったものをすしネタとして商品化する。昨年11月には第1弾として『魚育(うおいく)はまち』を販売しました。(海藻を食べ尽くすため)『海の厄介者』といわれるニザダイにキャベツを与え、くさみを消したすしネタも企画しました。商品にできない部分はエサや肥料にします。現在、このプロジェクトで全国の110の漁港と取引しています。オファーがあれば今後も増やしていきたいと思っています」

 ――すし店がなぜそこまでするのですか。

 「私はすし屋というジャンルで物事を考えていないんですよ。生産や加工も含めて総合的に考えないといけない。これを外食産業のプラットフォームにしたいと思っています」

 ――ビジネスとしては成り立ちますか。

 「初めの3年間はわずかに赤字になりました。4、5年目から利益が出始めて、規模も大きくなった。ただ、もうけというよりは社会的責任です。企業は法律を守っていたら良いっていうもんじゃない」

 ――とはいえ、一企業では限界がありますよね。

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 「国内の漁獲量に比べたら…

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