ワクチン注射時のストレスで副反応 どう防いだらいい?

小宮山亮磨
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 新型コロナウイルスのワクチン接種が、国内でも医療従事者から始まっている。重いアレルギー反応や注射後の痛みなどを懸念する声もあるが、より心配な副反応として、注射時のストレスで失神してしまう「血管迷走神経反射」をあげる専門家がいる。安心して予防接種を受けるには、どうすればいいだろうか。

 新型コロナのワクチンでは、アナフィラキシーと呼ばれる重いアレルギー反応がまれに起きると報告されている。ただ接種会場には、症状を抑える薬が用意してある。

 筋肉痛や体のだるさは、よく見られる副反応だ。日本ウイルス学会の理事などをつとめ、予防接種に詳しい長崎大学の森内浩幸教授によると、これは「ワクチンが効いて体が抗体をつくれるようになるための準備段階」だという。痛み止めの薬を飲めば和らぐし、2、3日すれば治る。

 むしろ、森内さんが心配するのは「血管迷走神経反射」と呼ばれる副反応だ。多くの人が接種を受けるなかで、この副反応について誤解された情報が広がり、それによってさらに副反応が増え、結果として、有用なワクチンを接種する人が大きく減ってしまう恐れがあるからだという。

 血管迷走神経反射とは一時的に脳への血流が減り、立ちくらみのように床に倒れたりする症状のこと。心臓や血管の動きをつかさどる副交感神経が過剰に働くことで起きる。「ホラー映画を見て失神するのと同じ」と森内さん。倒れたときに打ちどころが悪ければ、大けがをする恐れもある。

 注射した直後に起きることが多い。針が刺さる前や、接種してしばらく時間が経ってから起きることもある。

 森内さんによると、新型コロナのワクチン接種でこの副反応がどの程度起きるか、予測するのは難しい。日本では、子宮頸(けい)がんを防ぐためのHPVワクチンの接種で頻発した。報道で不安が広がり、接種率の低下につながった。不安をかかえた人が接種を受けて失神し、さらに不安を呼ぶ、という悪循環が起きたとみられるという。

 新型コロナ予防接種でも、「SNSやマスメディアで副反応の話が盛り上がると、頻度が桁違いに大きくなるおそれがある」と森内さんは心配する。

 世界保健機関(WHO)は2019年、血管迷走神経反射を含む「予防接種ストレス関連反応」について、実態や対策をまとめた(https://www.who.int/publications/i/item/978-92-4-151594-8別ウインドウで開きます)。報道やネット上のうわさなどで不安が広がることによる副反応の「集団発生」は、インフルエンザやB型肝炎などの予防接種で繰り返し起きているという。予防接種の計画が中止に追い込まれたケースも複数ある。

 この文書によると、12~16歳での報告が多い。例えば01年にインドの学校で200人が破傷風の予防接種を受け、うち58人が頭痛や失神などに見舞われた。血管迷走神経反射は思春期でやせ形の女性で起きやすい。ワクチンや痛みへの恐怖心のほか、混雑した接種会場で立ったまま待たされることも発症の可能性を高めるという。

 リラックスした状態で接種を受けられれば、リスクを下げられる。ソファやベッドで横になった状態で注射してもらえば、脳貧血になっても倒れてけがをする心配はない。長崎大の森内さんは、「不安な人は、かかりつけの医師のところで個別に接種してもらったほうが安心」と話す。

 ただ、自治体の対応が間に合わず、個別接種を受けられない場合もありそうだ。

 厚生労働省は自治体や医療機関に対し、過去に採血などで気分が悪くなったり失神したりしたことがある人については、接種後30分はなるべく立ち上がらないように指導することを求めている。接種前に記入する予診票で、不安を伝えることもできる。同省予防接種室によると、集団接種の会場でも、気分が悪くなった人のために用意されているベッドを活用して注射する、といった手法が考えられるという。(小宮山亮磨)