同性婚への議論、自民「封印」 保守系議員ら強硬反対論

二階堂友紀

 同性どうしの結婚ができないことの違憲性を問う一斉訴訟で、初めてとなる一審判決は「違憲」の判断を示した。同性カップルなどが「婚姻の自由」を訴えた訴訟はほかに4地裁で争われており、今後の判決が注目される。一方、司法への訴えが相次ぎ、自治体による同性カップルの公認制度が広がった今も、国会の議論は停滞している。

 同性愛者に対し、結婚による法的効果の一部すら享受する法的手段を提供していないのは、立法府の裁量権の範囲を超え、差別的取り扱いにあたる――。17日の札幌地裁判決はそう指摘し、同性どうしの結婚を認めていない民法などの規定は、法の下の平等を定めた憲法14条1項に違反しているとの判断を示した。

 判決を受け、与党関係者の一人は「法務省は『違憲判断が出ることはないだろう』と言っていたのに……」と漏らし、「ほかの一審判決も近く出る予定があるのか」と気にした。全国の4地裁で継続中の同種訴訟で、判決期日が決まっているものはないと伝えると、ほっとした様子だった。東京五輪パラリンピックが今夏に迫るなか、同性婚をめぐる違憲判断が立て続けに出るような事態になれば、五輪のホスト国として問題になりかねない――。そう考えたのだろうか。

 五輪憲章は根本原則で、性的指向を含むいかなる理由の差別も受けない権利と自由をうたっている。主要7カ国(G7)で同性カップルの権利を保障する法制度が何もないのは日本だけ。しかも米国のバイデン新政権は人権や多様性を重視する。与党関係者のなかにも「日本は五輪憲章を守っていると言えるだろうか」と疑問視する声がある。

同性カップルの権利保障 日本は「後進国」

 日本は同性カップルの権利保障において「後進国」だ。立憲民主、共産、社民の3党は2019年、同性どうしの結婚を可能にする民法改正案を衆院に提出した。野党は性的指向と性自認に関する差別解消法案も2度出しているが、いずれも与党の賛同が得られず、審議入りもしていない。

 自治体による同性カップルの公認制度が広がるなか、自民党は16年、「もはや無策ではいられない」(同党関係者)と性的少数者をめぐる議論を始めた。ただし、同党作成のパンフレットは「同性婚容認は相容(あいい)れません」「一部自治体が採用した『パートナーシップ制度』についても慎重な検討が必要」と明記。保守系議員らの強硬な反対論を背景に、同性婚につながる議論は「封印」している。

 自民党は同年5月、性的指向と性自認に関する理解増進法案の概要をまとめた。同性婚と切り離し、当事者の抱える困難の解消をめざす内容だったが、それですら党内には根強い反発があり、国会提出には至っていない。日本には性的指向と性自認に関する基本法が存在せず、同性愛者や両性愛者は日本の法制度上、位置づけられていない。

 自民党の閣僚経験者は「この判決を機に、せめて理解増進法だけでも成立させなければ」と話すが、もはや政府・与党として同性婚の議論は避けて通れないだろう。

 政府は国会などで「同性婚を認めるべきか否かは、我が国の家族の在り方の根幹に関わる問題で、極めて慎重な検討を要する」と繰り返してきた。だが、最近の各種調査では、同性どうしの結婚を法的に認めることに賛成する人が反対を上回る例が目立つ。社会の変化を受け止めず、いつまでも同じ答弁を繰り返すだけでは、立法府の不作為を問われる日も近いかもしれない。(二階堂友紀)