「裁判ではあってはならない」 民事訴訟の審理半年化

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松田史朗
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 法務省民事訴訟の審理を半年以内に終わらせる新たな制度の導入を検討している。裁判を利用しやすくするのが目的とされるが、「事実認定が粗雑になる」という弁護士らの反発を押し切って導入する必要はあるのか。約40年にわたって裁判官を務めた森野俊彦さん(74)に考えを聞いた。

 ――新しい制度の検討をどう見ていますか。

 「裁判はいまでも平均9カ月程度で終わっており、わざわざ6カ月以内に終える仕組みを新たに入れる必要は全くない。この制度は料理に例えると、少ない材料で手軽につくれるものをお客に出して済ますようなもの。裁判ではあってはならないことだ」

 ――使うかどうかは当事者同士の合意に任されており、選択肢を広げるという意味で前向きにとらえる人もいます。

 「審理を迅速に進められる優秀な裁判官にはさして反対する理由はない。しかし、この制度ができれば、代理人に働きかけるなどし、そうでない裁判官も含めて必ず使うようになる。主張や立証が制限され、当事者の納得が得られない裁判が多く出かねない」

 ――なぜ、必ず使うようになるのでしょう。

 「審理を終えた後、裁判官がまだ判決を書いていない事件は『判決未済』と呼ぶ。いまは各裁判官の『未済』の件数が内部で共有されており、これが多いと出世に悪影響が出る。多くの『未済』を抱える裁判官にとって、審理の期限が来たから判決を出す、と言える制度はまさに渡りに船だ」

 「裁判官には横並び意識もあ…

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