なぜ7回に増やせるの?1瓶5回のはずのコロナワクチン

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野中良祐 姫野直行
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 新型コロナウイルスのワクチンをめぐり、1瓶あたり5回とされていた接種回数を、注射器を変えることで「7回」に増やせると、京都の病院が発表した。ワクチンを担当する河野太郎行政改革相は「大いにやっていただきたい」と前向きな姿勢だ。いったいどういう仕組みなのか。課題はないのだろうか。

計算上はもともと7回接種が可能

 接種回数が問題になっているのは、医療従事者への優先接種が始まっている米ファイザー製の新型コロナワクチン「コミナティ」だ。このワクチンは、1瓶0・45ミリリットル入り。接種の際には、冷凍保存された瓶を解凍し、体液と同じ濃度の生理食塩水1・8ミリリットルを加え、計2・25ミリリットルにする。これを1回分ずつ注射器に移して使う。

 注射は1人分が1回0・3ミリリットルなので、計算上は7回分2・1ミリリットルを差し引いても0・15ミリリットル余ることになる。

 ところが、ワクチンの添付文書では1瓶を6回分としており、国の通知はさらに少ない5回分となっている。なぜなのか。

 回数の違いに関わるのは注射器の構造だ。通常のワクチン用注射器は、針の根元に隙間があり、薬が残ってしまう構造をしている。0・3ミリリットルの目盛り分のワクチンを瓶から吸い出すと、実際には少し余分に取っていることになる。

 この余分量は注射器によって違いがある。特殊な注射器では6回分採れるが、国内で通常使われている注射器だと薬が多く残るため、5回しか取れない。国は2月、ワクチンの手引で、1瓶あたり5回分として準備するよう、全国の自治体に通知した。

 戸惑ったのが、接種を目前に控えていた病院側だ。宇治徳洲会病院(京都府宇治市)の末吉敦病院長によると、接種を希望する職員1250人に対し、割り当てられたワクチンは195瓶。5回とすると975人分で、2割の人が接種できない。6回でも数十人が接種できないため、「何とかできないか」と院内で検討を進めた。

インスリン用の注射器に注目

 目を付けたのが、糖尿病患者に使われるインスリン用の注射器だった。インスリンは日常的に使われる薬の中では比較的高価で、無駄を減らすために針の根元に隙間がない注射器が使われている。

 どの注射器でも、針の中には薬がわずかに残ってしまうが、もともと皮下注射で使われるインスリン用の注射器の針は長さ約13ミリメートルと、筋肉注射で使われる通常のワクチン用注射器の針(約25ミリメートル)よりも短い。このため、インスリン用注射器で7回分を取っても、針に残るのはごくわずかで、瓶に約0・15ミリリットルを余らせることができるという。

 針が短い注射器でも、コロナワクチンの接種方法となっている筋肉注射はできるのか。宇治徳洲会病院では、ワクチン1瓶から、インスリン用注射器で5回分、通常の注射器に2回分を採取する。接種を受ける人の皮下脂肪の厚さを超音波装置で測り、厚さ10ミリメートルまでの人にはインスリン用注射器、それよりも厚い人には通常の注射器で接種するとしている。ほとんどの人はインスリン用注射器での接種が可能だという。

大臣は「どんどん」 国は「否定しないが…」

 ワクチン接種の調整を担う河野太郎行政改革相は9日の閣議後会見で「こういう創意工夫はどんどんやっていただきたい」と評価した。

 一方で、厚労省の担当者は…

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