「陸王」ヒントになった老舗工場 池井戸潤が送るエール

有料記事池井戸潤が撮る 日本の工場

文・池井戸潤 構成・加藤修 映像報道部・杉本康弘
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池井戸潤が撮る 日本の工場

 「半沢直樹」シリーズなどで人気の作家・池井戸潤さんが仕事の現場に迫る企画が、朝日新聞土曜別刷り「be」で連載中です。第5回は埼玉県羽生市にある小島染織工業を訪ねました。歴史ある藍染め工場を自ら撮影し、働く人々の気概を描き出します。デジタル版では池井戸さんが撮影した写真をたっぷりご覧いただけます。

 創業明治5年。爾来(じらい)149年の歴史を持つ藍染め工場である。

 社屋はオンボロ――いや失礼、年代物の木造平屋建て。離れてみると屋根の棟がくたびれて窪(くぼ)み、いまにも倒れそうな壁はつっかえ棒が支える。建て替えるよりも今の方が何倍もカネがかかるらしいけど、建て替えはしない。心意気ってヤツだ。

 この工場を訪ねたのは9年ぶり。拙著『陸王』の取材で立ち寄って以来であった。その後小説がドラマ化されたとき、こはぜ屋社長を演じる役所広司さんはじめ工員たちが羽織る馴染(なじ)みの半纏(はんてん)は、実はこの工場で作られたものだ。

「新品で納品したのに、演出で長年使われたような風合いになっていて驚きました」

 と小島秀之社長。ドラマにも「この半纏はオヤジのおさがりです」、というセリフがある。二代半世紀にわたって使える強度、使いやすさだけでなく、藍は虫除(よ)けにもなるのだとか。ついでに「勝ち色」と言われて縁起もいい。剣道着も藍染めである。

 そういえば、新しく始まったNHK大河ドラマ『青天を衝(つ)け』の主人公・渋沢栄一の実家も同じ埼玉県の藍農家だった。もしかすると、小島染織工業もその初期、渋沢家が作った藍を仕入れていたのかも知れない。

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 染め場近くにいくと藍特有の…

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