「文字どおり」じゃないエネルギー 言葉を遊ぶ現代美術

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田中ゑれ奈
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 言葉はときに「文字どおり」の意味以上に、強烈なエネルギーを発散する。アール・ブリュット作品に頻出のモチーフである言葉と文字の世界を、「視(み)る読む聴く」の三つの観点から遊ぶグループ展が開かれている。

 知的障害などがありアール・ブリュットの文脈に位置づけられる作家の作品と、それ以外の現代美術を区別せず紹介しているボーダレス・アートミュージアムNO-MA(滋賀県近江八幡市)の企画展。美術家・今井祝雄(のりお)がディレクションを務め、自身を含む11人の作品で構成する。

 執拗(しつよう)に紙の余白を殺すように書かれた文字は、タイポグラフィーとはまた違った視覚的な魅力を放つ。日常で接した言葉を丸文字のひらがなで繰り返す清水ちはるの作品や、独自のルールに基づき大きく変形した文字で量産される戸來貴規(へらいたかのり)の「にっき」はその好例だ。文字の中に別の文字を配置したり黒く塗りつぶしたりする操作は、意図的なデザインのようにさえ見えてくる。

 八巻清治(せいじ)は、地図アプリから拾った固有名詞やフレーズでメモ用紙を埋め尽くす。ブラジル出身で日本語を母語とせず、言葉によるコミュニケーションをほぼしない作家の行為を通して、「京都」や「セブンイレブン」といった文字はなじみのない外国語のように解体されていく。

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 同じく地名に関心を寄せる鈴…

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