「今年の桜は」36歳で子宮を失った私が出会う31文字
朝日新聞アピタル編集長・岡崎明子
もうすぐ桜の季節がやってくる。
尾崎祐子さん(37)は、2年前に娘と桜を眺めたときの思いが忘れられない。
当時、娘は4歳だった。朝、保育園に預けると、自宅で花を扱う仕事を始める。夕方、保育園に迎えに行き、夕飯を食べさせ、寝かしつけすると、一日が終わる――。
そんな日常が、ある日突然、崩れた。
2019年3月、出血をきっかけに近所のクリニックに行き、大学病院でステージ1bの子宮頸(けい)がんを告知された。
「わたし、死ぬのかな」。真っ先に考えたのが、まだまだ手のかかる娘のことだった。
朝から3時間以上かかった診察を終え、サブウェイでサンドイッチを買って帰った。
どんなに深刻な状況でも、おなかはすいていた。むしゃむしゃ食べながら、自宅で娘を見てくれていた夫に伝えた。
「がんだった。入院すると思うから、よろしくね」
「そっか。わかったよ」
いつもと変わらない、淡々とした返事だった。でも夫は1年前に父親を悪性リンパ腫で亡くしている。内心、ショックだったはずだ。
その日から眠れなくなり、夜中に何度もうなされた。
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娘が結婚するまでは、成長を…
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