不処分の男性の黙秘権など侵害 熊本県警の違法捜査認定

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屋代良樹 井岡諒
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 2016年の熊本地震の避難所で女児にわいせつな動画を見せたとして逮捕された会社員男性(当時19歳)が、違法な取り調べで精神的な苦痛を受けたとして、熊本県に損害賠償を求めた裁判の判決が3日、熊本地裁であった。中辻雄一朗裁判長は、取り調べを担当した警察官が黙秘権と接見交通権を侵害したと認め、県に16万5千円の支払いを命じた。

 判決などによると、男性は2016年5月に熊本市西区の避難所で女児(当時11)にスマートフォンでわいせつ動画を見せたとして県少年保護育成条例違反の疑いで逮捕され、同年10月、熊本家裁は無罪にあたる不処分とした。男性は約10日間の勾留期間中に違法な取り調べがあったとして19年5月に提訴していた。

 判決によると、男性は取り調べで容疑を否認。担当の警察官は16年5月21日、「本当のことを言ったら周りの評判が下がると思っているんじゃないか」「黙っててそれでいいとや」などと発言。判決は、黙秘権の行使で不利益や社会的非難を受けるような誤解を与える発言だと指摘し、「取り調べ方法として相当性を欠く。黙秘権を実質的に侵害し違法」と断じた。

 また、警察官は同じ取り調べで「弁護士さんと接見したときに目撃者がいてどうすればいいのか相談とかしてるんだろ」と発言。判決は、接見の具体的内容を質問・聴取する発言だとして「捜査機関としての注意義務に違反し、接見交通権を侵害し違法」と判断した。

 黙秘権は憲法38条で、接見交通権は刑事訴訟法で保障されている。原告側弁護士によると、男性は逮捕後、逮捕された時期になると気分が落ち込むほか、街で警察官を見かけると体調が悪くなるなど精神的苦痛が続いているという。

 閉廷後に会見した原告側の松本卓也弁護士は「適切な判断を頂けた。警察は権力を持っていることを自覚して捜査してほしい」と話した。男性は「判決を一つの区切りとして前を向いて生活していきたい。警察は誤りを受け入れて、本当の意味で再発防止に力を入れてほしい」とのコメントを出した。

 県警監察課は取材に、「判決の内容を検討して対応致します」とした。(屋代良樹)

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■黙っていることはまずい、心…

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