加藤シゲアキさん「もう甘えられない」 受賞後一問一答

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構成・興野優平
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 第42回吉川英治文学新人賞が2日発表され、アイドルグループ「NEWS」の加藤シゲアキさんの「オルタネート」(新潮社)と、武田綾乃さんの「愛されなくても別に」(講談社)が選ばれた。受賞会見で加藤さんが語った、これまで抱えてきたコンプレックス、作家としての自負、受賞の喜びを伝えたい相手とは。主なやりとりは次の通り。

 率直に言うと、驚いています。光栄な機会をいただいて、びっくりしつつも、だんだん実感が湧いてきた。やっぱりうれしいと思っています。先ほど、選考委員の伊集院静先生と少しだけお話ししました。「こういうときはとにかく喜べ」とおっしゃってくださったので、いまは頑張って喜ぼうと思っています。

 僕はジャニーズ事務所のタレントという立場が持つ話題性があって、小説も書かせてもらったと思っている。すごく光栄だと思っているが、コンプレックスでもありました。一般的な作家の方は新人賞を受賞してから作家生活がスタートすると思うが、僕は横入りしたような感覚があった。しかしながら、文芸界、出版社や作家の方がとても温かく歓迎して下さったことに感謝している。今回、吉川英治文学新人賞をいただいたことで少し恩返しができたかなと思いますし、ここからがスタートかなと思います。

 デビュー作「ピンクとグレー」の出版は2012年だったけれど、執筆はちょうど10年前でした。2月の半ばから3月末に初稿を書き上げた。忘れもしない震災があり、強烈な季節、時間でした。そこから振り返れば長い作家生活だったと思うが、10年間やめずに続けてきたことがいまに続いていると思うと、10年前の自分を少し褒めてやりたい気持ちもあります。

 ――「オルタネート」が直木賞候補になった際、「引け目を感じている」と話していた。実際に文学賞を受賞し、どのように思っていますか。今後どのような作家になりたいですか。

 まだ、1時間前に受賞の知らせを聞いたばかり。あまり受賞できるかどうかを意識しないようにしていました。(受賞を逃した)直木賞の経験もあるので、気楽に待っていよう、その後のことは心の動くままに感じよう、と思っていた。

 いま受賞した心持ちは、「もう甘えられないな」と。いままでもプロだという自覚を持って書いてはいましたが、もう周りの人も甘やかしてくれないだろう、と思います。(選考委員の重松清さんが講評で触れた)「のびしろ」という言葉は新人のうちしか言ってもらえない。緊張感をもって、今後の作家生活をスタートさせなければいけないと、わくわくしてもいるし、恐ろしくも感じています。

 直木賞に落選した日から、自分がこの先どういう作品を書きたくなるのかとずっと考え続けて、まだ明確な答えは出ていない。ただ、毎回、以前やったこととは違うことを、というつもりで書いてきた。今回も群像劇だったので、登場人物がたくさん出てきた。次は一人の主人公の物語で、なにか深いところ、触れたくても触れられないようなテーマを頑張って掘り下げることにチャレンジしたいという気持ちが、このところふくらんでいます。

 ――先ほど重松選考委員から…

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