「デジタル分野の核兵器」急ぐ中国 桁違いの計算能力

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合肥=西山明宏
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 2月、中国内陸部の安徽省合肥市にある中国初の量子コンピューターメーカー「本源量子」本社を記者が訪れると、展示ルームの天井から人と同じほどのサイズの白い筒がぶら下がっていた。昨年、中国で初めて販売された量子コンピューター「悟源」の本体部分だ。計算に使う部品を動かすのに超電導状態を維持する必要があるため、中は零下約270度に保たれている。

 中国の技術開発の拠点の一つ、中国科学技術大学があることなどから、政府が「科学の都」と位置づける合肥市では、約1100億円超を投じた量子技術の研究所の建設も進む。

 量子コンピューターは、既存のスーパーコンピューターを大きく超える高速計算機だ。スパコンでも何万年単位の時間がかかる計算を短時間でこなす桁違いの能力は、新薬や新素材の開発などの技術革新への期待の半面、ネット社会を支える現在の暗号をほとんど解読してしまうという怖さも背負う。米中で過熱する技術開発競争の主戦場だ。

 米トランプ政権との間で進んだ通商紛争と経済のデカップリング(切り離し)を背景に、昨秋、「科学技術強国」を目指すと宣言した習近平(シーチンピン)指導部は、今月5日に開幕する全国人民代表大会全人代)で、その青写真を示す。

 重点分野の一つに挙がるのが量子技術だ。

 「米国との差はどのぐらいあるのか」

 本源の仕事には中国軍も強い関心を寄せ、開発の進み具合を確かめる関係者からの問い合わせも頻繁だ。中国軍は、米IBMが2年後に完成させる予定の高性能量子コンピューターによって、軍事上の機密が解読されかねないと危惧。解読不可能な「量子暗号」を開発し、暗号解読などの力をつけて未来の戦略的優位を築くためにも、自国での技術確立を急がせたい考えとみられる。

 この分野では昨年9月までの特許数上位10社のうちIBMやグーグルなど米国勢が6社を占める一方、中国勢は本源が7位に入っているだけ。米国に水をあけられているのが実情だ。

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 本源は2017年に中国科学…

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