「ケヅレーライス」をご存じですか。1940年、太平洋戦争前夜の日本に、こんな名前の料理がありました。大阪で生まれた朝日新聞は5万号を迎えました。歴史を実感してもらえる企画をと、古い紙面をめくるうちに、目にとまり、つくってみることにしました。
1940(昭和15)年の東京朝日新聞のコラム「お弁当料理」に掲載されています。読んでみると、魚の焼きめしのようです。これは一体……つくるしかないでしょう。
タマネギとニンジンをみじん切りにし、ニンジンはレンジでチン。タマネギを炒めつつ、沸騰した湯に塩を加えて、魚を投入。どんな魚を使うか、なにも記述はありません。今回はサワラを使うことにしました。
タマネギを炒め、サワラを入れると、あっという間にぐずぐずに。めげません。ご飯を加え、さらに炒めます。グリーンピースと紅ショウガを散らしたら、一気に華やかになりました。
同僚が試食しました。気乗りしないようでしたが……。「ふたを開けたら、とてもきれいでびっくり。食べたら、バターとショウガが絶妙でおいしい。で、ケヅレーって何ですか?」
やっぱり気になりますよね、ケヅレー。そこで、料理を取材する長沢美津子・編集委員が調べました。以下、「調査報告」です。そこには、「目からウロコ」のお話が。
新聞と料理といえば、グルメエンターテインメント小説にして栄養や衛生の啓蒙(けいもう)記事でもあった、村井弦斎の「食道楽」が思い浮かびます。報知新聞で1903(明治36)年に連載開始、レシピ満載の書籍はベストセラーになりました。当時の最先端だったであろう西洋料理もさまざまに登場します。
単行本の復刻版をめくっていくと……秋の巻に載っていました「ケズレー」が。主人公が西洋料理のフルコースで客をもてなす場面のひと皿で、女性客が得意げに解説するレシピは「ケヅレーライス」とほぼ同じです。
朝日新聞の記事はその三十数年後、新聞読者も西洋料理もまだ限られた層の時代なので、どれほど認知されていたメニューかはわかりませんが、想像の料理ではないことがわかりました。
どこの国の料理? 貴族の朝食だったという説も
では、「ケズレー」はどこか…
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