新発見「若紫」の意義 源氏物語、どう読み継がれたか

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塚本和人
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 平安時代紫式部が創作した『源氏物語』の写本のうち、鎌倉時代の歌人・藤原定家が整えたとみられる「若紫(わかむらさき)」巻の写本が一昨年見つかり、話題を呼んだ。その歴史的意義などを解説する『人がつなぐ源氏物語 藤原定家の写本からたどる物語の千年』が、朝日選書(朝日新聞出版)から刊行された。『源氏物語』はどのように読み継がれてきたのか。著者で国文学者の伊井春樹・大阪大名誉教授(80)に聞いた。

 『源氏物語』は1008年ごろの成立とみられるが、その原本は確認されていない。多くの人の手で書き写されてきたため、書写の回数が増えれば誤写の可能性も高まり、古い言葉の理解力の問題もあって、本文に混乱がみられるようになった。そこで成立から約200年たった鎌倉時代に、写本によって異なる本文を整えて標準化を試みたのが、源光行(みつゆき)と親行(ちかゆき)の親子による「河内(かわち)本」と、定家が校訂した「定家本(青表紙本)」だった。

 現在読むことができる『源氏物語』のテキストは、この定家本に依拠している。ただ、現存する定家本は全54巻のうち、新発見の「若紫」巻を含めても5巻にすぎない。このため、室町時代に成立し、ほぼ全巻が残った「大島本」が「青表紙本」の姿をとどめているとされ、現在のテキストの主流となった。伊井さんが、このほど新発見の「若紫」と「大島本」を比較した結果、言葉の使い方などに多くの違いのあることが明らかになった。

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 鎌倉~室町時代にかけては「…

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