黒澤明「羅生門」が生まれるまで 黒澤メモなどでたどる
増田愛子
1951年、ベネチア国際映画祭で黒澤明監督「羅生門」が金獅子賞(グランプリ)を受賞した。世界の目が日本映画に注がれるきっかけとなった「事件」から70年。その創作過程に迫る展覧会が誕生の地、京都で開かれている。
「羅生門」は、ある武士の殺害を巡り、その妻、犯人として連行された盗賊、目撃者たちの食い違う証言をそれぞれの視点で描く。人間のエゴイズムが真実を覆い隠していく様を鋭くえぐる作品だ。大映京都撮影所で製作された。
脚本はこれがデビュー作となった橋本忍。芥川龍之介の短編「藪(やぶ)の中」を脚色した短いシナリオが出発点となった。展示は、この初稿や橋本自身の加筆稿、そこから黒澤が仕上げた決定稿の比較で始まる。
「人間は噓(うそ)を真実と思ひ込む能力を与へられている」「俺は、すべての人人の中で、あの女ほど愛しもし、憎みもした者はない」
黒澤がノートに記したメモをたどると、その頭の中で登場人物がぐんぐん厚みを増す感覚を追体験しているような気持ちになる。
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監督のイメージを具現化した…
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