コロナで認知症受け入れの壁 地域の「抵抗感」に変化

有料記事認知症と生きるには

松本一生
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 新型コロナウイルスの感染拡大から1年、私たちはたくさんのことを学びました。介護保険が始まってから20年が過ぎ、これまで当たり前のようにしてきた認知症ケアの「あり方」が大きく問われることにもなりました。今回の経験は、いかにして認知症当事者の人権を守り、社会の偏見と闘い、そして「恐怖の中で、どのように連帯するべきか」を私たちに突き付けてきました。

家族に差別への不安

 認知症はこれまで当たり前のようにできた物事の認識や判断力を低下させます。前回テーマにした「感染の危険性が理解できず、感染を広げてしまうのではないか」という家族の心配や、施設が感染拡大を恐れるあまり面会に制限をかけたことで、当事者の認知症が悪化して家族の顔さえ忘れてしまうのではないかという不安や恐れがありました。そして社会から大切な家族が(認知症だというだけで)差別されてしまうのではないかという不安もありました。

 私の手元には2020年5月と11月に地域社会が認知症当事者に対してどういったイメージを持ったかを聞いたアンケートがあります。感染拡大ではじめての緊急事態宣言が発出された後、5月の段階で地域の人びと50人に「コロナ禍でも認知症の当事者を受け入れるか」と聞くと、「危険を感じる」と答えた住民が41人いました。認知症があるだけで「危険!」などと誤解されてしまうのは人権侵害だ、と私は怒りましたが。一方、「地域で受け入れる」と答えた人は1人でした。

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 しかし11月になると「危険…

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松本一生
松本一生(まつもと・いっしょう)精神科医
松本診療所(ものわすれクリニック)院長、大阪市立大大学院客員教授。1956年大阪市生まれ。83年大阪歯科大卒。90年関西医科大卒。専門は老年精神医学、家族や支援職の心のケア。大阪市でカウンセリング中心の認知症診療にあたる。著書に「認知症ケアのストレス対処法」(中央法規出版)など