緩和ケア病棟の女子会 患者同士というより患者同志 

有料記事それぞれの最終楽章

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それぞれの最終楽章・足し算命(7)

海南病院緩和ケア医 大橋洋平さん

 がんを患い、患者のリアルな苦しみを日々味わっています。転移前は転移や再発しないか、転移が分かったあとは抗がん剤は効いてくれるのかと苦しみます。これはがん自体の苦しみです。もう一つがん治療の苦しみがあります。食事がほとんど取れなくなり、消化液の逆流で横になって眠ることも出来ませんでした。抗がん剤を飲むようになってからは様々な副作用に苦しみ、副作用が大きければ抗がん剤の服用を中止せざるをえなくなり、がんの勢いが大きくなるのではと苦しみます。

 考え方の基本を余命から足し算命に変え、前を向いていますが、心のどこかで死を意識しています。医者として患者の苦しみを言葉としては理解していたつもりでしたが、そんな生やさしいものではありませんでした。

 リアルな苦しみを実感しているからこそ、面談でも、医師と患者というより、患者同士として話すことが増えました。緩和ケア医として患者に接する態度や心構えががんの発病前後で変わったとは思っていませんが、リアルな苦しみを実感しているからか、患者になったあと「先生の話はよう分かるわ」と患者さんから言われることが増えました。患者同士として話せるようになったこと、これが緩和ケア医ががん患者になった最大の収穫かも知れません。

 60代の男性は7月に膵臓(すいぞう)がんと分かりました。抗がん剤治療を始めましたが、副作用がひどく、治療を1カ月で中止せざるを得ませんでした。うつ状態で病室にこもりがちで、生きることを諦めかけているように見えました。

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