白井伸洋
在日朝鮮人と日本人。ルーツの違う5人の美術学生らが6年前、一枚の壁を越えるための「橋」を作った。そのアートプロジェクトが京都市京セラ美術館で開かれている平成時代の美術を集めた「平成美術:うたかたと瓦礫(デブリ) 1989―2019」(朝日新聞社など主催)で再現されている。
橋は木製の階段状で、2015年に東京都小平市の武蔵野美術大学と隣接する朝鮮大学校の間を隔てる壁の両側に作られた。それぞれの学校で美術を学んでいた5人の在校生や卒業生たちが合同で作品の展示会を開くにあたり、来場者が両校の展示会場を行き来できるようにするためだった。
反響は大きかった。武蔵野美術大学と朝鮮大学校という場所の持つ意味に思いを巡らせ、壁を国境に見立てる人、橋を友好の象徴と捉える人。期間中、6千人以上の人々が訪れ、「橋」を往復した。
あれから6年。再び集まった今回は、美術館での再現のため、場所の持つ意味合いが当時とは大きく異なる。そのため、互いの対話の書き起こしや手紙も展示して、制作の「舞台裏」を見せることにした。6年前、両校の間の壁に橋をつくるまでの、議論や葛藤も知ってほしかった。
例えば、5人の交流に対し、嫌…