退去の日の朝、妻にキスして首絞めた 異国で困窮の果て

有料記事

里見稔
[PR]

 気づくと自宅アパートの台所で仰向けに倒れていた。床には調理器具が散らばり、ナイフで切った左手首は出血している。リビングでは、その手であやめた妻と幼い息子2人が布団の上に横たわっていた。

 長野県箕輪町のアパートで2019年11月に起きた無理心中事件で、殺人罪に問われたシャザダ・ホラム被告(50)=パキスタン国籍=に対し、長野地裁松本支部(高橋正幸裁判長)は25日、懲役28年(求刑懲役30年)の実刑判決を言い渡した。

 12日から5回行われた裁判員裁判では被告が徐々に追い詰められていく構図が浮き彫りになった。

 「もうみんなで死ぬしかない」。妻の精神的不調や金の悩みなどを抱えながらも、社会から孤立していくホラム被告。家賃を滞納していたアパートからの退去期限の日の午前、事件は起きた。午前10時ごろに訪れた裁判所の執行官や管理会社の職員らが発見し、ホラム被告だけが助かった。

 4日後、長野県警伊那署に妻への殺人容疑で逮捕された。その後、息子2人を窒息死させた疑いで2回逮捕され、鑑定留置を経て20年3月に殺人罪で起訴された。

 25歳で来日。日本人女性との離婚を経て、15年に母国のお見合いでシャビル・イラムさん(殺害時37歳)と再婚し、同町のアパートで暮らし始めた。16年には長男のアヤンちゃん(同2歳)を授かった。中古車販売業で生計をたて、一時は大黒柱として年300万円以上を稼いだ。

ここから続き

 18年2月、イラムさんの実…

この記事は有料記事です。残り674文字有料会員になると続きをお読みいただけます。

【お得なキャンペーン中】有料記事読み放題!スタンダードコースが今なら2カ月間月額100円!詳しくはこちら