最北ラグビー部復活へCFで応援 羽幌高OBら立ち上げ

岡田和彦
[PR]

 日本最北のラグビー部が復活をめざしている。人口減が進む北海道羽幌町の道立羽幌高校ラグビー部は一時、部員が3人にまで減った。それが昨年4月、マネジャー3人を含め計15人に増えた。単独チームは組めないが、花園まであと一歩まで迫ったことがあるチームを支援しようと、OBらがクラウドファンディング(CF)を立ち上げた。

 羽幌町は北海道北部の日本海沿岸にあり、甘エビ漁で知られる。人口は1969(昭和44)年に3万2095人を記録したが、炭鉱閉山や鉄道廃線などで減り続け、1月現在で6654人。羽幌高校の生徒数も165人にまで減った。

 ラグビー部は1976年創部。町ぐるみでラグビーが盛んになり、北北海道大会出場校の常連になった。2013年には決勝まで進んだが、惜敗した。花園初出場が同校や町の悲願だ。

 しかし2019年秋、部員がわずか3人になった。3年生が抜け、2年生はもともとゼロ。残されたのが1年生の男女各1人の選手と女子マネジャー1人だった。

 2年生男子の前田澪(みお)主将は旭川市の高校との連合で試合に出場できたが、町と旭川市の距離は約150キロ。合同練習にはなかなか参加できず、同級の女子の池田心愛(ここな)さん、マネジャーの河野繭香(まゆか)さんとパスやキャッチ、筋トレなどを繰り返した。「このまま続けていけるのか」。前田主将は廃部の危機を感じていた。

 昨年4月、1年生12人(男子選手10人、女子マネジャー2人)が入部してきた。新入生の男子27人のうちの10人。「思ってもみなかった。本当にうれしかった」と前田主将。ラグビー経験がなかった新入部員らを駆り立てたのは、19年に日本で開催されたラグビー・ワールドカップ(W杯)での日本代表の活躍だった。

 中学でバスケットボール部だった工藤瑠稀矢(るきや)さん(1年)は「W杯を見てやりたくなった。高校には男子部員が1人しかいないことは知っていたけれど、後輩が入ればチームが組めると思って友だちを誘った」。中学でサッカー部だった中川駆琉(かける)さん(1年)も「当たりが強くて初めは怖かったけれど、やってみると楽しい。ラグビー部OBの父も喜んでくれている」と話す。

 15人制では単独チームは組めないが、一緒に切磋琢磨(せっさたくま)する仲間ができた。冬は雪が積もるグラウンドをタイヤを引いてならし、5対6のミニゲームなどで、雪まみれになっている。

 女子の池田さんは、U18女子セブンズラグビー道代表に選ばれ、昨年10月の全国大会に出場。現在は左肩を負傷して治療中だが、練習では大声で指示を出し、男子部員たちを鼓舞する。

 監督の酒井雄大教諭(26)は同校野球部の元主将。ラグビー経験はない顧問の河上賢一教諭(30)も旭川市などへの遠征に積極的に同行する。

 この熱気を部の再興につなげたいと支援を申し出たのが元同校ラグビー部監督で、現在は静岡聖光学院高校ラグビー部監督の佐々木陽平教諭(43)。練習方法の動画などを羽幌高校に送り、専門的な指導を補佐する。同じくOBで元明治大学ラグビー部監督の丹羽政彦さん(52)=清水建設札幌市在住=も指導に訪れる。「町は寂しくなったが、ラグビー部の伝統の灯をともし続け、花園初出場をつかんでほしい」

 丹羽さんが代表を務める「北海道羽幌高校ラグビー部を応援する会」は、部員の遠征費や外部コーチの交通費などを捻出するため、CFを立ち上げた。寄付は朝日新聞社のCFサイト「A―port」(https://a-port.asahi.com/projects/habororugby/別ウインドウで開きます)で3月末まで受け付けている。(岡田和彦)

有料会員になると会員限定の有料記事もお読みいただけます。

【お得なキャンペーン中】有料記事読み放題!スタンダードコースが今なら2カ月間月額100円!詳しくはこちら