第5回性別や官民の壁とらわれず オードリー・タン氏の生き方

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オードリー・タンの教育論⑤

 「自分が学びたい知識は高校にはない」と、進学をやめてIT業界に飛び込んだオードリー・タン(唐鳳)氏(39)は、ある日、自らがトランスジェンダーであることを両親に伝えた。性差にとらわれないその生き方は、社会に横たわる様々な壁を取り払おうとするタン氏の仕事にも通じている。

「性別による制限は、一方の性を持つ人に、別の性の人が体験できる内容を共有できなくさせてしまう。そんな社会から生まれる政策は、様々な人々が抱える問題を解決できません」(オードリー・タン氏)

 台湾は昨年来のコロナ禍で、早期に流行を抑え込んだ。今年2月中旬の時点で、累積感染者は約940人(台湾入境時に確認された人を除く域内感染者は約80人、死者は9人)にとどまる。人口比で日本に当てはめた場合、感染者は約4800人、死者は50人足らずという計算だ。世界保健機関(WHO)からも称賛された成果を上げた背景には、民間から様々な知恵が生まれる土壌と、それらをしっかりと採り入れていく行政当局の姿勢が挙げられる。台湾当局が今年1月に世界経済フォーラム(WEF)の指標を使って独自に算出、公表した男女格差は世界で29位(日本はWEFの発表で121位)だ。タン氏へのインタビューでも、社会の多様さが台湾の強みであり、さらに伸ばしてしていくべきだという信念が読み取れた。

【これまでの連載はこちら】

台湾の感染対策の中心人物の一人、オードリー・タン氏の半生や教育論を6回の連載で伝えます。

「らしさ」なんてつまらないこと

 IT業界で実績を重ねたタン…

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