豪州の留学産業、コロナで危機 学校に生き残り策聞いた

有料記事

シドニー=小暮哲夫
[PR]

 「年内は無理か……」。まだ2月なのに、こんな声も聞こえる。オーストラリアに留学生が来なくなって1年近く。世界3位の人気を誇る留学先に、新型コロナウイルス対策の入国禁止措置がのしかかっている。苦しむ現場を訪ねた。(シドニー=小暮哲夫

【動画】コロナで留学生が来ない 苦境長引く豪州の留学産業=小暮哲夫、ミワ・ブルマー撮影

 シドニーの繁華街の一角にあるELCは、4階建てビルのほとんどを借り切る英語学校だ。記者が訪れた1月下旬、留学生たちでにぎわうはずの共用のラウンジスペースは静まり返っていた。

 24ある教室も、空室が目立つ。授業中の教室を見つけたが、生徒は2人だけだった。「コロナ前は16人いた。とても厳しい」と話すのは講師のローレン・カルソープさん(34)。生徒の一人でコロンビアから留学中のポーラ・ベタンコートさん(46)は「今は自分の国に帰った方が危ない。この学校と先生が好きです。でも、友人たちが帰国してさみしい」と話した。

 1年前に500人いた生徒は50人に減った。日本人も70~80人いたが、3人しかいない。政府が昨年3月から外国人の入国を原則禁止し、もともといた生徒の多くが帰国する一方、新たな留学生が来ないからだ。

 政府が昨年5月に出した方針では、昨年7月中に留学生の受け入れ再開を検討する案も上がっていた。

 だが、昨年後半から各国で感染が増え、英国などで感染力の強いとされる変異ウイルスも出て、その機運はしぼんだ。政府は帰国する自国民に対してすら、週6千人ほどの枠を設けている。この数カ月は、市中感染がゼロの日も珍しくなく、昨年11月以降で死者はわずか2人。封じ込めに成功した状況では、国境再開はリスクが高く映る。その結果、豪州人でさえ4万人ほどが帰国の順番待ちなのだ。

 全国の英語学校が加盟する業界団体「イングリッシュ・オーストラリア」によると、国内112校で昨年の第3四半期(7~9月)に、前年同期比で生徒数が73・8%減った。日本人は90%の減少だった。

迫る支援打ち切り

 政府が昨年3月、コロナ禍で経営が厳しい事業所向けに打ち出した賃金支払いの助成制度のおかげで、今のところは完全に閉校したのは「ひとにぎり」で、休校中が数校にとどまるという。だが、同団体のブレット・ブラッカー最高経営責任者は「3月末には、この数が劇的に変わるかもしれない」と危惧する。政府が制度を3月末で打ち切る予定だからで、政府に助成の延長や、国境再開に向けた明確な計画を示すよう求めている。

 ELCの場合、賃金助成制度を利用しても、45人いた講師を20人に減らさざるを得なかった。それも、同じコースを2、3人の講師で分担させて雇用を維持している。

ここから続き

 デビッド・スコット社長は「…

この記事は有料記事です。残り1465文字有料会員になると続きをお読みいただけます。

【お得なキャンペーン中】有料記事読み放題!スタンダードコースが今なら2カ月間月額100円!詳しくはこちら