自分が一番大切なトランピズム、何と楽か 豊永郁子さん

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政治季評 豊永郁子さん

 4年前、トランプ大統領の就任に際して「トランプ氏はなぜ危険か」という論考を書いた。公約の三つの政策、石炭回帰と環境規制緩和エネルギー政策不法移民とイスラム教徒の排斥政策、孤立主義保護主義の対外政策から、危険は明白と考えた。この大統領は環境、人権、国際協調を軽んじる。悪いことに、米国の例は諸国に波及する。温暖化と環境汚染は進み、出自や信仰による差別、国家による人権侵害が横行し、世界は無秩序に向かうだろう。

 三つの公約は、一部の有権者を強く惹(ひ)き付け、共和党に新しい支持者をもたらした。就任後のトランプ氏はさらに何でもありの手法で支持基盤の強化を図る。キリスト教保守派の団体に裁判所人事や外交政策への影響力を与え、独立的であるべき連邦準備制度理事会金融緩和を促し、株高を誘導した。共和党らしく富裕層と企業に減税と規制緩和で報いる一方、支持者向けの財政支出に余念なく、同党の「小さな政府」路線をあっさり捨て去った。

 保護主義では、幅広い分野でしばしば対象国を特定して関税を引き上げ、国内の多くの生産者を利し(一部を害し)、あるいは対象国から米国産品の輸入枠拡大などの譲歩を引き出した。孤立主義では、同盟国に米軍駐留の見返りを求め、米国製兵器を大量に購入させた。経済界・産業界はこうして生み出される活況に浴し、トランプ氏の一存で決まる利得を期待して、あるいは損失を避けようとして、トランプ陣営に糾合されていくように見えた。政治家は行動の効果すべてに配慮すべきだと言われるが、再選に役立つという効果だけを考え、実に効果的に行動したのがトランプ氏であった。

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 だが、まさか陰謀論――世界…

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