「悪魔」を振り払った柔道家 気づかせてくれた父と長女

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考えさせて伸ばすには?

 「子どもを使った、指導者による代理戦争。小学生の大会には、そんな側面がある」

 柔道専門のwebメディア「eJudo」編集長、古田英毅さん(47)の言葉だ。

 微に入り細にわたる論理的な試合リポートで、日本代表クラスから子どもまで選手や指導者に幅広く影響を与える存在。自身、新宿区柔道会(東京都)で小中学生を教える指導者でもある。

 そんな古田さんの指導には、「黒歴史」がある。

 「代理戦争に、自分も片足を突っ込んでいた」

連載「子どもとスポーツ」

 大人が一方的に怒鳴ったり指示したりするのではなく、子どもが自分で考え、仲間と対話しながらトライし、遊び感覚でいろいろなことを身につけていく――。それがスポーツの本質であり、そのプロセスこそが、社会に出た時に役立つのではないでしょうか。このシリーズでは、子どもの主体性を大切にしたスポーツ活動に携わる人々をリポートします。さて、古田さんの「黒歴史」はどう変わっていくのでしょうか。

甘い誘惑

 秋田県金浦町(現にかほ市)生まれ。1964年東京五輪の代表候補だった父・隆二さんが営む道場で柔道を始めた。秋田高3年の時、団体戦で全国大会に出場したが、いったん柔道から離れた。「自分には才能がなかったから」

 新宿柔道会の指導員となったのは2004年、31歳の時だ。「技の仕組みをしっかり教える」という丁寧な指導が評判を呼び、入門者は4年後には60人を超えた。

 レベルの高い子どもが増え、試合で勝てるようになると、欲が頭をもたげた。

 「この子たちと一緒に、全国大会にいけるのではないか」

 週2回の練習を3回、4回と増やしていった。畳の上での稽古の前に、近所の公園でのトレーニングも始まった。

 「立ち技に寝技。柔道は覚えることが多い。その『引き出し』を多く持っている方が、小学生は勝てるから」

 練習を厳しくして、勝つための技術を詰め込んだ。

 10年の関東大会の団体戦でベスト8入りし、念願の全国大会出場を決めた。その試合を見に駆けつけた父は「たいしたもんだ」と褒めてくれた。

 夜に2人で飲みに出かけた。深酔いした父の声色が変わった。

 「一度だけ言う」…

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