バックの薫り ノルシュテインの影(小原篤のアニマゲ丼)

有料記事小原篤のアニマゲ丼

[PR]

 オンラインのみで昨年8月に開催された第18回広島国際アニメーションフェスティバルの受賞作品を見る機会がありました。35年の歴史がある国際的な映画祭なのに、広島市が次回(2022年)から音楽とメディア芸術を柱とした新イベントに切り替えることにした経緯は昨年8月17日の本欄「どうなる広島アニメフェス」で書きましたのでそれはおいといて、受賞作を見て感じたのは2大巨匠、フレデリック・バックさん(1924~2013)とユーリ・ノルシュテインさん(1941~)の濃い影響。そして全体を覆うもの悲しいトーン。「終わり」や「別れ」を意識させるものが多かったのです。

 東京芸術大学大学院映像研究科と横浜市文化観光局が主催する公開講座「第18回広島国際アニメーションフェスティバル受賞作品と対話する」が5日、同市内で開催され、6作品が受賞者のインタビュー映像などと併せて上映されました。

 優秀賞「Mother didn’t know」は、第13回大会のグランプリ受賞者であるノルウェーのアニータ・キリ(Anita Killi)監督による人形アニメ。強い朝日が差し込む牛小屋で牛たちの耳やひげが逆光に透ける冒頭の映像から素晴らしい。小屋に入ってくる女の子の足もスカートから透けて浮かび上がって、あまりに繊細な照明が一種の緊張感を生みます。そして、女の子がサイロの内壁をガリガリと引っかく音、アーミーナイフのハサミで自ら髪を切り落とすザクリザクリという音がまがまがしく、沈鬱(ちんうつ)な気分を濃厚に醸し出します。妖精みたいなヒゲのおじいさんがサイロの上から垂らした黒い液体が、内壁に縞(しま)模様を描いて不思議な林へ変化する映像的なファンタジーも鮮やか。ラストを含めいろいろ分からないところがあるのですが、子どもの鬱病がテーマらしいです。

ここから続き

 インタビュー映像でキリさん…

この記事は有料記事です。残り3044文字有料会員になると続きをお読みいただけます。

【お得なキャンペーン中】有料記事読み放題!スタンダードコースが今なら2カ月間月額100円!詳しくはこちら