想定外の研究が生んだ燃料アンモニア 脱炭素で注目

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伊藤弘毅
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 温室効果ガスの排出量を2050年までに実質ゼロにする。政府が昨秋に掲げた脱炭素目標の達成に向け、にわかに注目されている資源がある。アンモニアだ。燃やしても二酸化炭素(CO₂)が出ないため、CO₂を多く出す石炭に代わる火力発電の燃料として期待されているのだ。ところが、燃料として注目されたのは、ごく最近のこと。もともと全く別の使い道を探るために行っていたある研究がきっかけだった。

 脱炭素化に向け、経済産業省が昨年末に公表した「グリーン成長戦略」では、先行する欧州で主力の洋上風力などと並び、「燃料アンモニア産業」が重点分野に挙げられた。シナリオは、23年までに石炭火力の燃料に混ぜて燃やす「混焼」技術を確立し、25年以降に「20%混焼」を実用化。40年以降にアンモニアだけを燃やす「専焼」を実現する、というものだ。

 そうなれば、CO₂を出さないうえに、原発や石炭火力と同じく、常に一定量を発電する「ベース電源」にもなる。電気の需要に応じて出力を上げ下げし、変動の大きい再生可能エネルギーを補う「調整電源」としても使えるなどと、期待は大きい。

 さらに、アンモニアには、早くから「CO₂フリー」燃料として注目されてきた水素よりも扱いやすいという利点がある。液体のアンモニアはマイナス33度で貯蔵でき、マイナス253度以下の液体水素に比べ、貯蔵タンクなどの整備費用が安くすみ、運搬もしやすい。いまも自動車部品などの樹脂や化学肥料の原料に使われており、既存の流通網も活用できる。

 しかし、普及に向けた課題も…

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