2度目の緊急事態宣言が出された大きな要因として、今夏に延期された東京オリンピック(五輪)・パラリンピックの存在があった。首相の菅義偉は「コロナに打ち勝った証しに」と開催の意義を繰り返すなか、大会を見つめる世の中の視線は日に日に厳しさを増していた。(敬称略)

拡大する写真・図版医療危機コロナ東京100days⑤

 「宣言が明けて感染者が減ったら、五輪に対してのムードは絶対に良くなる。今は耐えるだけ」

 緊急事態宣言下の1月下旬、ある東京都幹部は願うように言った。「第3波」の拡大で、東京五輪・パラリンピックへの懐疑論が広がっていた。11月に訪れた「第3波」の予兆は、五輪開催に向けて機運を盛り上げていこうとする時期に重なった。

「医療危機 コロナ 東京100days」
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 海外出張する日本人らについて、帰国後の2週間待機免除に政府が踏み切ったのは11月1日。経済再生を重視する首相の菅義偉が進めた出入国緩和の一環だ。目線の先には、海外から選手や観客を呼び込む五輪があった。

拡大する写真・図版新型コロナウイルスによる国内の死者が5千人となった1月23日は、東京五輪の開幕まで半年の節目でもあった=東京都江東区、長島一浩撮影

 「第2波」が襲った8月上旬に350人近くまで増えた都内の感染者数(週平均)はこの時期、約170人にまで落ち着いていた。大会関係者は、翌年夏の開催に向けて態勢を立て直す好機とみていた。

 11月中旬には、国際オリンピック委員会(IOC)会長のトーマス・バッハの来日も予定されていた。大会関係者は「五輪に懐疑的な世論を変える契機になる」と考えていた。

 だが、その期待を裏切るように、「第3波」は勢いを増していった。

 兆候が見えたのは、11月7日…

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