サラリーマン川柳 きっかけは第一生命社内報×天声人語

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山下裕志
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 職場や家庭の悲喜こもごもを詠んだ第一生命保険の「サラリーマン川柳コンクール」。今年1月下旬に発表された優秀作100句も、コロナ禍や人気アニメ「鬼滅の刃」にちなんだ句が詠まれ、SNSで話題になった。累計130万句の応募を集めた人気コンテンツが30年あまり前に初めてお目見えしたのは、第一生命の社内報だった。

 電話鳴る 出るまで待とう 煙草(たばこ)ぷかり(大井本社 女子)

 パソコンに できるものかと お茶を汲(く)み(関東 支部内勤)

 秋の空 昔は女 今、上司(信州 支部内勤)

 どれも、第一生命が1986年に出した社内報の新年号に掲載された川柳だ。バブル期に突入しようとする当時、今となっては時代を感じさせる句や、現代にも通じる会社員のおかしみを詠んだ句が並ぶ。

上司が企画に難色、でも…

 この前年秋ごろ、新年号向けの企画を考えていた社内報の担当部署から出たアイデアが、社内向けの川柳だった。当時の広報課長が上司に相談したところ、上司からは「川柳なんてそんなに簡単にできない」と一度は拒否された。

 集まらなければ企画をとりやめればいい――。そんな気持ちで始めたところ、思ったよりもたくさんの句が社内の各拠点から寄せられた。新年号では入選86句を掲載。社内での評判も上々だった。

 毎年恒例の社内企画にとどまらなかったのは、当時の広報課長の機転だ。

 社内報を発行する直前の85年12月、川柳を新聞社に持ち込んだ。あわよくば掲載されて第一生命のPRになれば、と考えた。社内報のゲラを持って訪れたのは東京・築地の朝日新聞社。記者は「これは面白い」と反応した、と広報課長は語っている。

 数日後、広報課長は新聞のしかも1面に掲載されているのを見て驚いた。朝日新聞朝刊の「天声人語」で川柳が紹介されていた。

 「第一生命が社員から川柳を募集したら、なかなかいきのいいのが集まった」。85年12月22日の天声人語はこんな書き出しで始まり、江戸の川柳も交えて世の悲哀をつづっていた。

(天声人語)現代サラリーマン川柳

1985年12月22日に掲載された「天声人語」。全文をこちらに再録しました

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 これを受け、いったんは川柳…

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