応酬も気迫もなく 菅首相はなぜテニスが下手なのか

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コラム「多事奏論」 高橋純子(編集委員)

 スケジュール管理はかたくなに手帳派。新年、革カバーから前年のものを抜いて真っさらを差し込めば、なかなかに厳かな気持ちになる。2年前からは1枚のはがきも帯同するようになった。先日亡くなった作家の半藤一利さんから送られたものだ。当欄に「まことに同感」下さり、「八十九爺いにはげまされても百万の味方を得た思いにはならないでしょうが……負けずに頑張りましょう」。丸みのあるかわいらしい筆跡。万年筆のブルーインクが美しい。お会いしたこともお話したこともないけれど、おおらかであたたかい人柄がしのばれる。

 訃報(ふほう)に触れ、「昭和史 1926―1945」をひらく。この昭和史の20年から何を教訓として引き出すべきか、半藤さんはかんで含めるようにつづってくれている。

 大局観や複眼的な考え方の不在▼起こると困るようなことは起きないということにする意識▼失敗を率直に認めず、その失敗から学ばない態度▼情報を軽視した「驕慢(きょうまん)な無知」。それは単なる無知ではなく、知っていながら無視して固執すること……。

 「最大の危機において日本人は抽象的な観念論を非常に好み、具体的な理性的な方法論をまったく検討しようとしないということです。自分にとって望ましい目標をまず設定し、実に上手な作文で壮大な空中楼閣を描くのが得意なんですね。物事は自分の希望するように動くと考えるのです」

 「(政治的指導者も軍事的指導者も)根拠がないのに『大丈夫、勝てる』だの『大丈夫、アメリカは合意する』だのということを繰り返してきました。そして、その結果まずくいった時の底知れぬ無責任です」

 布マスクを配れば国民の不安はパッと消える。人類がコロナに打ち勝った証しとしての東京オリンピック――。現下、昭和史的サンプルをいくつも採取できてしまう。やばい。まずい。敗戦から75年余、私たちはいったい何をやってきたのだろうか?

 というわけで、われらが菅義偉首相である。正直、これほど「出来ない」人とは想像だにしていなかった。

 昨年12月の当欄で、コロナ…

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