原発事故、今なおトラウマ 香山リカさん語る心理的被曝

有料記事東日本大震災を語る

聞き手・構成 小森敦司
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 あの原発事故で被ったトラウマ(精神的外傷)は今も消えていない。香山リカさんは、精神科医として、東京電力福島第一原発事故が日本人に与えた影響を、そうみている。たしかに長い時を経た今もなお、世論調査では再稼働反対が多数を占める。このトラウマを克服するには、原発そのものをなくさないといけない。そう思って香山さんは脱原発運動にかかわっている。

 ――原発事故は私たちにどんな衝撃を与えた、と言えるのでしょうか。

 「大きな心理的なショックが与えられました。地震の揺れの後、津波のニュースに目が行きましたが、途中から福島第一原発で電源が喪失しているとの情報が入ってきて、原発は電源を喪失すると、まずいんだと初めて気付きましたよね。

 そうこうしている間に(原子炉建屋が)爆発する映像です。リアルタイムで多くの人が心理的ダメージを受けたと思います」

 「その地域だけでなく、ほとんど日本全体が、いわゆる『急性ストレス障害』になったと言っていい。これは命に関わるようなショックを受けた時の急性反応で、1カ月ぐらい、パニックから、眠れない、落ち着かないといった状況になるんです。どうなるか分からないという不安と実際に爆発したというショックと両方があいまったんですね」

 ――東日本では関東地方の農産物からも放射性物質が検出される事態に至ります。

 「私の患者さんでも北欧出身の夫と彼の国に一緒に行くとか、米国人も退避するように言われたとかいう話を聞いて、じゃあ、ここに住んでいる私たちはどうしたらいいの、と。本当に不安は大きかったと思います」

 「津波と違い、原発事故は直接亡くなった方がいないと言われますが、やはり心理的ダメージは大きかった。私は、とてつもない『心理的被曝(ひばく)』という『実害』があったと言っています」

 ――でも、総体としては、よく頑張った?

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 「今回のコロナもそうですけ…

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