核ボタンの名は「フットボール」 大統領のカバンの中身

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聞き手・半田尚子
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 米国にバイデン新政権が誕生しました。1月20日には就任式が開かれましたが、トランプ前大統領は欠席しました。新旧大統領が対面する形での交代ができなかったため、核兵器の使用を決める「核のボタン」は異例の遠隔状態での引き継ぎが行われました。緊急事態に備えて歴代の大統領に引き継がれているこのボタン、一体どのようなものなのでしょうか。米国の核政策に携わったウィリアム・ペリー元国防長官らの共著「核のボタン」を監修した長崎大学核兵器廃絶研究センター長の吉田文彦さんに聞きました。

――米国の大統領に引き継がれている「核のボタン」とは一体どんなものなのでしょうか?

 「核のボタン」と言っても、ボタンを押せばすぐに核兵器が発射されるという仕組みにはなっていません。

 米国の大統領はいつ何時でも核兵器の発射命令をすぐに出せる仕組みになっています。米国に核攻撃してくれば、すぐにでも核報復が可能であるという態勢を担保することが核抑止に欠かせません。そこで、大統領の随行者の中にはいつも軍人がいて、発射命令を出すのに必要な機器一式を黒色の革製ブリーフケースに入れて持ち運んでいます。このカバンが「核のボタン」と呼ばれています。

 英紙ガーディアンによると、このブリーフケースは米ゼロハリバートン社製で重さは約20キロ。「昔の医者が持っていた診療カバンのような見た目」とのことです。

 このカバンの公式名称は「大統領緊急対応カバン」ですが、関係者の間での通称は「フットボール」です。かつて、核戦争のコードネームが「ドロップキック」だったことから、核戦争の指令を飛ばすカバンにこの別称がついたとされています。ちなみに、「ドロップキック」はアメリカンフットボールの用語で、ボールをグラウンドに落としてバウンドした直後に蹴ることです。

 緊急事態に備え、このカバンを持った軍人は、常に短時間のうちに大統領のもとに駆けつけられるようにしています。ホワイトハウスの地下で眠り、大統領と同じエレベーターにも乗ります。米CNNによると、フットボールを持ち歩く軍人は国防総省連邦捜査局などによる厳しい身辺調査が行われるそうです。2016年5月、当時のオバマ大統領が広島を訪れた際は、平和記念公園にフットボールが持ち込まれたことが話題になりましたね。

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 気になるカバンの中身ですが…

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