「生き地獄」の果てに 傷だらけの2歳児、命奪ったのは

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前田健汰
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 2019年6月5日早朝、札幌市中央区マンションの一室で、2歳の女児の命が絶たれた。死亡時の体重は6・7キロ。同年代の平均の半分ほどだった。頭部には骨折や皮下出血、顔や肩などにはやけど。全身に多くのけがが見つかった。北海道警は虐待事件とみて捜査し、母親(22)と、同居していた交際相手の男(26)を傷害容疑で逮捕した。

 司法解剖の結果、死因は低栄養による衰弱死と判断された。母親と男は同年5月15日ごろから女児に必要な食事を与えず、けがの治療も受けさせなかったなどとして、保護責任者遺棄致死罪で起訴された。さらに男は、女児に暴行を加えて死亡させたとして傷害致死罪にも問われた。

 2人の裁判員裁判は20年9~11月、札幌地裁で別々に開かれた。裁判長は同じで、裁判官の構成と裁判員は異なる。2人はそれぞれ起訴内容を否認し、女児への暴行については、互いに「相手がやった」と主張した。

 検察側の冒頭陳述などによると、母親は16年12月に女児を出産し、札幌市の繁華街・ススキノの飲食店でホステスをしながら、シングルマザーとして子育てをしていた。男は店の客で、2人は19年2月ごろから交際を始めた。その約2カ月後には、母親のマンションで3人で一緒に暮らすようになったという。

 男の公判で、証人として出廷した母親は、男が女児に暴行を加える様子を何度も目撃したと証言した。

 検察官「男から女児に暴力はあったか」

 母親「3月下旬ごろ、男は両手の中指の第2関節で、娘のこめかみをぐりぐりしていた」

 検察官「それ以降の暴行は」

 母親「4月上旬に買ってきたモンブランを娘が勝手に食べた際、思いっきり平手で頭をぶったたいた。そのまま片腕を引っ張って洗面所に閉じ込めた」

 検察官「女児はどうなった」

 母親「床に倒れ込みました」

 検察官「女児が引きずられてどうした」

 母親「すぐに追いかけて、『なんてことするの』と男を怒った」

 検察官「5月以降は」

 母親「ベビーカーに手足がぐるぐる巻きにされ、口に粘着テープがはられていた」

 検察官「いつのことか」

 母親「5月30日の朝。男は『いたずらしないようにしておいた』と言っていた。すごくびっくりした。テープをはがすと口の中にバナナが詰められていた」

 検察官「(女児が死亡した)6月5日までに暴行を見たことは」

 母親「6月4日にげんこつをしている場面を見ている」

 検察官「あなたが暴力を振るったことは」

 母親「一度もありません」

 倒れるほど頭をたたく、ベビーカーに固定する、口にバナナを詰め込み、さらに粘着テープで塞ぐ――。男はこうした暴行を否定し、暴力を振るっていたのは母親だと主張した。

幼い娘の命を奪ったのは、誰だったのか。証言を振り返ります。

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 弁護人「母親が娘をたたいた…

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