ペットボトルに水筒 コロナ禍、ビールの持ち帰りが続々

黒田早織
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 ペットボトル入りの生ビールに、ビールを持ち運べる水筒。コロナ禍で「軽く1杯飲んで帰ろう」がなかなかできない今、「宅飲み」の形を変える商品がじわりと注目を集めている。(黒田早織)

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 海外の食品や酒類の輸出入などを手がける「グリーンエージェント」(本社・埼玉県上尾市西門前)は先月、鮮度を保ったまま配送やテイクアウトできる「ペットボトル生ビール」を発売した。

 単に「ペットボトルに生ビールを入れたもの」ではない。ロシアから輸入した専用の充塡(じゅうてん)機は、品質劣化をもたらす最大の敵である酸素がビールに直接触れるのを防ぐため、ペットボトルの中に炭酸を充満させてからビールを入れる仕組み。白い泡もグラスに注いだときと変わらぬ状態になる。ペットボトルは酸素の透過を防ぐ特殊なコーティングが施されたものを採用した。

 記者がその場でつがれた生ビールとペットボトル生ビールを飲み比べてみたが、味は同じ。持ち帰ったものを約1週間後にグラスに注いで飲んだが、白い泡もそのままで、炭酸も味も正真正銘の「生ビール」だった。約2週間、保存がきくという。

 生ビールの輸入も行う同社は、2019年ごろからロシアや米国でビールのテイクアウトが流行していることを知り、専用充填機の導入準備を進めていた。そこに昨年、コロナ禍が直撃。従来の卸し先である飲食店での酒類の需要が落ち込んだことも受け、一気に実現へと動き出した。

 当初は回収して繰り返し使う容器でのデリバリー販売だったが、「もっと広い地域の方に飲んでもらいたい」と、12月にペットボトルでの販売を始めた。

 「コロナ禍で多くのことがリセットされ、生ビールはお店でしか飲めないというイメージを変えた」と同社マネジャーの西堂晃進(あきのぶ)さん(33)。約1カ月で約6500本を売り上げた。地域住民のリピーターも多いといい、「地元に根付いて商売をさせてもらう大切さを改めて感じた」と話す。

 税抜き1本(500ml)850円。同社内にある店舗やホームページ、アマゾンや楽天でも購入できる。

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 JR西川口駅近くのブルワリー「GROW BREW HOUSE」では、保温・保冷効果に優れ、ビールを入れて持ち運べるグラウラーと呼ばれる水筒のような容器を、6千円程度で販売している。

 店主の岩立佳泰さん(36)によると、これまでに約60本売れ、ビールをテイクアウトする人も多いという。コロナ禍以降、グラウラーを販売するクラフトビール屋が増えているといい、「店で飲みにくくても家で飲める。コロナ時代に合った飲み方で好評です」

 国税庁が昨年、コロナ禍で打撃を受けた飲食店への救済措置として期限付き酒類小売業免許を与えることにしたため、飲食店も店内で提供している酒類をテイクアウト用に販売できるようになった。

 40代の男性客も最近グラウラーを購入した。テイクアウトした翌日や2日後でもおいしく飲めるという。「お店で人と飲むのがもちろん楽しいけど、家で1人でたしなむのもありだなと気付いた」。別の男性は「出勤時にはお茶を入れて、夜までに空にしてビールをテイクアウトして帰るんですよ」と話した。

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