慰安婦訴訟の判決が確定 集会では文大統領への批判も

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ソウル=鈴木拓也 安倍龍太郎 二階堂友紀
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 韓国の裁判所が日本政府に元慰安婦らへの賠償を命じた判決が23日午前0時で控訴期限を迎えた。裁判に応じない姿勢を貫く日本政府は控訴せず、判決は確定した。原告側は日本政府の資産差し押さえも検討しており、日韓関係の悪化は長期化しそうだ。

 「失望した。人権弁護士として弱者と共にあった大統領が、被害者たちが成し遂げた判決の意味を知らないはずがない」。元慰安婦を支援する「正義記憶連帯」(正義連)の李娜栄(イナヨン)理事長は、20日にソウルであった抗議集会で、「(判決に)困惑している」と18日の会見で語った文在寅(ムンジェイン)大統領を批判した。

 会見で文氏は、朴槿恵(パククネ)前政権下の2015年に結ばれた日韓慰安婦合意を「公式合意」とも話した。正義連はこの発言にも反発する。合意当時、支援団体は「日本政府の法的責任を認めていない」と激しく反発し、韓国世論に波及した。世論に押された文政権は、元慰安婦支援のための財団を一方的に解散し、合意を空文化させた経緯がある。

 米国のバイデン大統領は、合意を後押ししたオバマ政権で副大統領を務めた。文政権は米国を意識し、対日改善に努力する意思を示す。一方、原告や支援団体には「政府は口ばかりで、この問題を放置してきた」との不満が募る。文政権に状況打開の妙案はなく、思い切った政策変更も難しい。

 判決が確定しても、日本政府は賠償に応じない方針なので、原告側は韓国内の日本政府資産の差し押さえを裁判所に申し立てることも検討する。公館や公用車、パソコンなどの備品のほか、金融機関の口座なども想定される。ただ、在外公館の不可侵を定めたウィーン条約があり、韓国政府関係者は「現実にはあり得ない」と話す。裁判所が申し立てを受理しても、執行手続きは時間をかけて慎重に検討するとみられる。

 日韓間のもう一つの問題である元徴用工訴訟をめぐっては、被告である日本企業の韓国内資産を売却して原告への賠償に充てる「現金化」の手続きが進み、裁判所が売却命令をいつ出してもおかしくない。文政権内には「今春にも現金化に至る可能性がある」との見方がある。会見で文氏が現金化を「望ましくない」と言及したのも、こうした危機感からだ。

 ただ、任期が残り1年超となった文氏にとって、外交の最重要課題は北朝鮮との関係改善。「対日関係は米国の懸念を招かない程度に悪化を防ぐ」(大統領府に近い関係者)というのが本音だ。外交省も21日、大統領への業務報告で、対日関係は、これ以上の悪化を防ぐという意味を込めた「管理する」との表現にとどめた。(ソウル=鈴木拓也)

日本は韓国側が対応すべき問題だとの立場

 日本政府は23日未明、判決確定を受けて茂木敏充外相の談話を発表。「判決は国際法と日韓両国間の合意に反するもので、断じて受け入れられない」として、韓国政府に自らの責任で国際法違反を是正する措置を取るよう改めて求めた。

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