編集委員 稲垣康介
菅義偉首相が官房長官時代から重宝してきた言い回しは、無敵の門前払いだ。はぐらかす手間もいらない。
「仮定の質問には答えられません」
私が最近、やたらと受ける質問がある。
「東京五輪は開けるの? 中止なの?」
私はわからない。でも、菅首相は仮定の質問には答えないのが信条のはずなのに、この難解な問いには迷いがない。
「人類が新型コロナウイルスに打ち勝った証しとして……」。開催に向けた決意は安倍晋三前首相が好んだ言い回しを踏襲して勇ましい。勇ましすぎて、引く。
あらゆる仮定を洗い出し、予想する。スポーツ記者に身近なのは五輪のメダル予想だ。外せば専門記者の眼力が足りなかったと同僚、読者に笑われる。冷徹になりきれなかった私の経験を告白したい。
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2010年バンクーバー冬季…
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