長野県軽井沢町で2016年、大学生ら15人が死亡し26人が負傷したスキーバス転落事故で、長野地検は21日、運行会社「イーエスピー」(東京都羽村市)の高橋美作(みさく)社長(59)と運行管理者だった荒井強・元社員(52)を業務上過失致死傷罪で在宅起訴し、発表した。地検は認否を明らかにしていないが、捜査関係者によると、2人は「事故が起きるとは思わなかった」と否認しているという。

 発表によると、荒井元社員は、事故で死亡した男性運転手(当時65)から、事故前月の採用時に「大型バスの運転に不安がある」と聞きながら、技量を把握せずに安全管理の義務を怠った。高橋社長は荒井元社員から技量不足について報告を受けたのに、適切な指導や監督を怠ったとされる。

 この結果、運転手は16年1月15日未明、国道18号の下り坂で、大型バス特有のギアやブレーキの操作を的確にできず、時速96キロまで加速してカーブを曲がりきれずに崖下に転落。技量不足が原因でバスが制御不能になったと認定した。

 自動車運転死傷処罰法違反(過失運転致死傷)容疑で書類送検されていた運転手については、被疑者死亡のため不起訴処分とした。

 県警の書類送検は2017年6月。捜査に3年半を要したことについて地検の細野隆司次席検事は「遺族らの精神的負担もあったと思う。遺族の意見も心に置いて判断した」と述べた。

 事故をきっかけに、過剰な価格競争を背景とした業界の安全軽視の実態が明らかになった。国は安全対策に取り組めるよう、運賃の下限額を明示させるなどしたが、下限額を実質的に割る運行は後を絶たないと話す業者もいる。コロナ禍で経営難に拍車がかかっているのが現状だ。

 事故から5年。長期にわたる捜査の末、検察は社長らの在宅起訴に踏み切った。事故原因の特定が難しく、長野地検は当初、立件を「難しい」(幹部)とみていたが、死亡した運転手の元同僚の証言をきっかけに捜査が大きく動いた。

 2017年6月に社長らを書類…

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