米国で、バイデン新政権が発足する。トランプ政権の激動を経て、国内外がどう変わるのか。支持者は「日常が取り戻せる」「国が癒やされる」と期待するが、トランプ氏の影は色濃く残る。(ワシントン=藤原学思)
19日朝、デラウェア州ウィルミントンの公立校に、5~14歳の150人が戻ってきた。新型コロナウイルスの影響で中断されていた対面授業が、この日から一部再開され、全校生徒の3分の1が登校した。校長のアーロン・バスさん(41)は、笑って出迎えた。
学校の周辺には、多くの警備車両があった。ウィルミントンはバイデン氏の地元で、この日はワシントンへの出発前に演説したためだ。教師は子供たちに「あす、この街から大統領が誕生する」と紹介した。
ウィルミントンから30分ほどのフィラデルフィアで育ったバスさんは、教育への特別な思い入れがある。7歳で両親が離婚し、母親に育てられた。試験で奨学金を得たことで私立の中学、高校に進学した。
近隣に住むのは貧困層の黒人が9割、学校では裕福な白人が9割。「二つの米国」を行き来し、教育者としてそのギャップを埋めたいと考えるようになった。
今の教え子の9割は黒人だ。8割は貧しい家庭で暮らし、給食費の補助を受ける。でも、肌の色や家庭の経済力が、人生を決めると思ってほしくない。
「アメリカンドリームは確かにある」。その象徴がバイデン氏と、副大統領になるカマラ・ハリス氏だ。
「大統領になる人が、学校からわずか数キロのところに住んできた。史上最高齢の大統領と、マイノリティーの副大統領が同時に誕生する。子どもたちは、そんな歴史を目にするんです」
トランプ大統領の支持者が連邦議会議事堂を襲撃した事件も、子供たちに説明しなければならないと考えている。事件直後、教職員には「意見が合わなくてもいい。私たち大人が何年も解決できていない問題について、語り、向き合い、向き合わせましょう」とメールを送った。
トランプ政権が米国に「癒えがたいトラウマ」とも心配するが、バイデン政権で米国が少しずつ「平常心を取り戻してくれる」と期待する。朝起きて、トランプ氏のツイートを目にする。さらに、そのニュースを見聞きする。そんな悪夢のくり返しに、ため息をつく日々が終わる。
「長く議員を務めたバイデンは、『二つの米国』のどちら側の人とも会話ができる。それこそがいま、求められている。政治は退屈で、予測可能でいい。『ふつう』と『まっとうさ』を取り戻してほしい」
12年前、オバマ前大統領の…
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