大友克洋はクールな革命 中条省平氏の「AKIRA」論
コロナ禍による東京五輪延期で、この作品を思い出した人も多いのではないでしょうか。近未来SF漫画の金字塔「AKIRA」。年内には全集刊行も予定されている、大友克洋さんの代表作です。「AKIRA」、そして大友漫画の魅力を、漫画評論も数多く手がける、学習院大教授の中条省平さんに聞きました。
連載スタートは「事件」だった
――1973年にデビューした大友克洋さんは、短編「ハイウェイスター」(76年)をはじめ、そのリアルな描線とさめた空気で〈ニューウェーブ〉として「AKIRA」以前から、注目されていました。
82年に「大友克洋が連載を始める!」ということで、「AKIRA」は、ファンにとって大きな事件でした。僕の周りの人間も、これを読んでいないと話にならないという感じ。僕自身は連載を追わないタイプなので、最初の単行本が出たときの感動は、すごかったです。
――大友さんの何が新しかったのでしょうか。
戦後のマンガ史を振り返ると、手塚治虫さんは、ディズニー以降のアニメーションに影響を受けた、丸っこい、誰もが共感できる「かわいい」タッチ。それに反旗を翻したのが、白土三平さんの「忍者武芸帳」(59~62年)をはじめとする劇画でした。その強烈なインパクトの背後には、安保闘争に象徴される、若者の政治的なパワーの盛り上がりがあったと思います。
ただ、政治的な運動への関心…
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