「史上最大」のワクチン戦略打ち出した英国 日本は? 

有料記事多事奏論

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記者コラム「多事奏論」 論説委員 郷富佐子

 2020年が「マスクの年」だったとしたら、21年は「ワクチンの年」になるかもしれない。

 年明け早々、3度目のロックダウン都市封鎖)に入った英国を見ながら、そんなことを考えた。新型コロナウイルスの変異型が急拡大する英国ではいま、ワクチン接種が「希望の光」になっている。

 欧州連合からの離脱で国民の分断をあおったジョンソン英首相だが、コロナ対策では、ほぼ全方位から批判されてきた。経済重視で感染対策が後手に回ったのと、言うことがぶれて現場が混乱したのが大きい。そこへ変異型の出現で医療崩壊が目前となり、いよいよ追い詰められている。

 この危機を乗り切るには、さらなるロックダウンとワクチンしかない――年明けに続けて開いた記者会見で、ジョンソン首相は「英史上最大」というワクチン接種計画をぶち上げた。来月15日までに高齢者や医療・介護従事者ら高リスクの計1500万人にワクチンを打つ。国軍が配送を支援し、ボランティアを大量動員して打つ。スタジアムなどの公共施設も開放して打つ。

 「短期間でそんなに打てるのか」との質問に、同席した首席医学顧問は「易しくはない」と認め、ワクチンが万能薬ではないことも説明した。今後の見通しでは、「だれもが家を出ず、同時に全速力で接種を進めれば、希望はある」と控えめだった。

 検査と感染経路の追跡に限界が来たら、行動制限を強めてワクチン接種を進めるしかないのか。日本も同じ道をたどるとしたら。世界では、すでに約50カ国で3500万人近くが接種している(14日現在)。不安を覚えつつ、ふと疑問が浮かんだ。

 そもそも、いまの日本に「ワクチン戦略」なんてあるのだろうか。

 菅義偉首相は年頭記者会見で…

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