どんな魚もこの煮汁と煮方で 煮付け成功の「方程式」

ごはんラボ

編集委員・長沢美津子

記事の後半で、作り方のポイントを動画でご覧いただけます

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ごはんラボ 魚の煮付け

 旬の魚を、甘辛の煮付けにして食べる楽しみをお届けします。今回の記事ではカレイの切り身ですが、淡泊な白身も脂のある青魚も、切り身も尾頭付きも作り方の基本は同じ。料理監修の林亮平さんによる煮付けの「方程式」を、魚売り場のその日のおすすめでお試しください。

 下ごしらえの霜降りで、臭みになる皮のぬめりや血を取ったら、魚の重さを量って煮汁の用意です。魚に対して同じ重さの水分、1割のしょうゆとその半量の砂糖。水分は水と酒が半々という料理屋のぜいたくな割合で甘さ控えめです。好みで次に作る時は加減してください。

 煮る時はずっと強火で、沸いた汁の泡で魚を包み込んで火を通していきます。身はふっくらした状態で取り出し、煮汁を煮詰めて上からかける。中まで味がしみていない魚に汁を付けながら味わってください。

 アレンジは角切りのマグロです。煮る時間や調味料の量を増やすことで、違う一品に変身です。(編集委員・長沢美津子

魚の煮付け

(材料・2人前)料理監修:林亮平さん(日本料理・てのしま)

□ 魚の切り身(カレイ) 2切れ(200g)

□ 水 100ml

□ 酒 100ml

□ しょうゆ 20g(大さじ1強)

□ 砂糖 10g(大さじ1強)

□ ユズ皮 適量

作り方

①魚の、盛り付けた時に表にする側の、厚い部分に十字の切り込みを入れる。カレイは白い腹を表にするときれい。鍋に湯を沸かし、ボウルに冷水を用意する。火を止めてから、魚ひと切れを網じゃくしにのせ湯に入れる。すぐ表面が白く変わるので引き揚げ、冷水に。もうひと切れも同様にして取り出す。

熱で汚れを固めて取るひと手間で、すっきり上品な仕上がり。冷水の中で軽くこすり、残ったうろこも落とす=合田昌弘撮影

②湯を捨て洗った鍋に水、酒、しょうゆ、砂糖を入れて混ぜる。魚を並べ、落としぶたをのせて火を付ける。火は強火。

③沸騰したら強火のままタイマーを4分にセットする。泡状の煮汁が落としぶたの上までくる状態を保つ。タイマーが鳴ったら一度火を止めて魚を皿に取り出す。

落としぶたの上まで泡が上がってくる。木のふたがないときはキッチンペーパーなど紙のふたで代用する=合田昌弘撮影

④鍋の煮汁を中火にかける。煮詰め加減はサラサラがいいか、トロリとさせたいかの好みで変える。魚の上からかけて、ユズ皮をせん切りにしたものをのせる。

*1人前約175kcal、塩分1.8g(栄養計算:女子栄養大学栄養クリニック)

マグロの時雨煮とつくだ煮

 赤身のマグロやカツオで作る常備菜。あっさりした時雨煮はマグロ200gを2~3cm角に切り、煮付けと同じ調味料で汁気がなくなるまで煮る。ショウガ1片分のせん切りを加えてもいい。冷蔵庫で4、5日保存できる。つくだ煮は同量のマグロ、水、酒にしょうゆと砂糖を2倍にして煮る。保存期間は10日ほど。

Cookery Science

 煮付けを作る時、鍋に落としぶたをして強火で加熱すると、煮汁の対流が盛んに起こって魚の上からも熱を伝えられる。同じ直径のフライパンに同じ量の煮汁を入れて比べると、鍋の形の違いから対流が弱くなって上からの加熱が弱まり、煮る時間が長くなるぶん魚が固くなる。(調理科学監修:味の素食品研究所・川﨑寛也さん)

写真・図版

Topic 煮る道具、和の伝統

 日本料理の「煮る」調理は多様。煮付けは煮汁を沸かして短時間で素材に火を通しました。含め煮は時間をかけて煮汁を素材に吸わせ、だしを味わうもので、照り煮やいり煮は最後に煮汁の水分を飛ばすなど、火の強弱と汁の量の調整で様々な仕上げがあります。

 和食でよく使う「雪平(ゆきひら)(行平とも)」は煮る調理に向く鍋。銅やアルミなど熱伝導率の高い素材で、表面に凹凸をつける「打ち出し」という加工が表面積を広くして火の当たる面を増やします。適度な重さの落としぶたは素材の形を崩さず煮上げる。その国の料理と道具の関係は深いのです。

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