世界各地の先住民には、かつて外部から持ち込まれた伝染病で人口の大半を失った歴史がある。今、新型コロナウイルスの猛威は、彼らが住む地球上の辺境にも及び始めている。

 インド本土から約千キロ離れたベンガル湾の絶海に島々が点在するアンダマン諸島。ここに全人口が50人余りという少数民族がいる。インド本土の多数派の住民とは異なるネグリート(黒色人種)系の大アンダマン人だ。昨年8月、そのうちの11人がコロナ感染した。

 感染者は島々の中心都市ポートブレアに住み、感染拡大が続くインド本土と接触があった人たちだった。現地の保健当局者は電話取材に「隔離と療養により、全員が陰性となったが、大アンダマン人の居住地である小島に感染が及ぶのを防ぐため、島の出身者であっても陰性を確認しない限り、島への渡航を禁じている」と話す。

 アンダマン諸島では18世紀後半、英領インドから英国人らが島々に渡り、入植を始めた。その時点で、大アンダマン人は数千人いたとされる。しかし、入植者が持ち込んだ伝染病で人口は激減した。かつては10の言語グループがあったとされるが、2010年には残っていた4言語のうち二つの言語の最後の話者が相次いで亡くなった。共同体の存亡は現実的な問題となっている。

 コロナ禍は北極圏にも及び始め…

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